【男主】感触【胡蝶しのぶ】

ー ページ39

ー





暖かくて、心地よくて……なんだろう、この感触は。

何か優しいものに体まるごと、包み込まれているような…………



「…………ぁ」



うすら目を開けて、昨晩のことを思いだし、じわじわと耳や顔に熱が集まっていくのを感じる。

すぐ隣には、まだ起きていないらしいAさんの顔。切れ長の瞳に長い睫毛が、朝日にキラキラと光っていた。



そうだ……私、Aさんと……



自身の肌に赤く、Aさんの残したものが見えたときの嬉し恥ずかしさが堪らない。

好きな人と繋がるって、こんなにも幸せなんだ……



「ん…………しの、ぶ……」



Aさんがもぞもぞと体を動かして、私の腰を引き寄せる。



「Aさん……そろそろ起きないと。カナヲ達が来てしまいます……」



ずっと、こうしていたいけれど。



「……まだねむい、から、来させとけよ…………」

「そういう訳にも……あ、Aさん……！」



こんな、何気ないやりとりさえ。

嗚呼、姉さん。

あなたが居なくなって、生きる意味を失った私に、何もかもを授けてくれました。

…………Aさん。



「愛して、います…………」



恥ずかしくてきっと言えないから、あなたが寝ぼけている今、言ってしまおう。

耳元でそっと、囁く。

Aさん。









……………愛しています。





ー

終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)

←ー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す