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「あの……本当に、なんなんですか」
俺が聞きてぇよ。
「いや……お前の姉さんが、上手いもんでも食ってこいっつうから……」
苦し紛れに言ったその言葉は、またも怪しそうに受け取られる。
ったく、俺は何故、胡蝶に言われた通りにしてしまうのだろう。
あいつが怖いわけでもなく、んでもって俺に特別慈悲の心があるわけでもない。
……やっぱ、あいつの声になんかあるんだ。
「まぁ……せっかくだから頂きますけど」
胡蝶妹はしぶしぶといった様子で団子の串を掴む。
なんだ……食わずに逃げられるかと思った。
案外美味しそうに食うもんでほっとして、俺もやがてひとつ口に入れた。
しばらくは黙々と食べるばかりで会話もなく、俺は横目で胡蝶妹を見ていたが……やっぱり綺麗な奴だった。
そりゃ、絡まれるよな……謎に納得して、団子を飲み込む。
すると、胡蝶妹はふいに口を開いた。
「……姉さんが、貴方のことをよく話していました」
「……え?」
……聞いてねぇぞ、胡蝶。
ってことは、胡蝶妹は俺のこと、知っていたのか……?
「姉さんは……きっと、貴方のことを好いているのだと思います」
「っ……けほ」
あまりにどストレートな言葉に、思わずむせかえる。
この娘は、一体何を言い出すかと思えば……
「それはねぇな」
胡蝶の可笑しそうに笑う様子が頭に浮かび、俺は苦笑しながら顔の前で手を振る。
「しかし、姉さんはいつも……貴方のことを誉めていらして……私は訳もわからず頷くことしかできず……」
胡蝶妹のその言葉を聞いて、彼女の困った様子も、頭に浮かぶ。
面白いほどに想像ができて、気の毒というか、なぜだか可笑しくなってきて、俺はたまらず笑ってしまう。
「ふ、はは……それは……悪かったな……生憎、俺は胡蝶が言ってるような奴じゃない、そうだろ?」
胡蝶妹は目をぱちくりして、しばらくして、クスリと笑った。
「いえ、優しい笑顔をする人だと言っていましたが……その通りですね」
「……!」
……それは、お前の方だろう。
まさか、そんな、鈴を転がすような可愛らしい笑顔を見せるとは、思ってもいなかった。
調子が狂う……な。
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天霧(プロフ) - うっひょうぅぅぅう!しのぶさん最高ですよ! (2021年11月5日 20時) (レス) id: 29b58b93c0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - しのぶちゃんかわいいですよね、、!更新待ってます! (2020年8月12日 22時) (レス) id: ec54d11116 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - めちゃくちゃこの作品好みです!更新お願いします!!!これからもがんばってください!! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
イツキ - 二人のイチャイチャ楽しみです! (2020年5月10日 12時) (レス) id: a90c8d5aa0 (このIDを非表示/違反報告)
剣華 - いつもニヤニヤしながら見させてもらってます。ほんと好きです!次の更新も楽しみにしてます!がんばってください。 (2020年5月7日 12時) (レス) id: e2d859c4ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たつき | 作成日時:2020年3月30日 7時