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熱い……息が苦しい。
この感覚、何年ぶりだろうか。確かあのときは、姉さんや母たちが、休みもせずに看病をしてくれて。
_____大丈夫、ずっとそばに居るよ……
暖かい言葉が、じわりと身体中に浸透したのを覚えている。
ほら今も、暖かい感触が…………
「……え?」
今……?
重い瞼をゆっくりと開けると、お風呂上がりなのか、髪に雫を付けたAさんが、私の頭を撫でていた。
「Aさ……ん?私……」
「あ、悪ぃ……起こしちまった?」
寝てていいぞ、と微笑んで、再び私の頭を撫でる。
たまに髪に指を通して、クルクルと巻かれるのが、不思議と気持ちいい……
「ごめんなさい……あの、私……みんなは……」
柱たるもの、自分の健康管理くらい、自分でしなければならないはず。
だって、Aさんは元気だもの……
それに、無駄のないまとまった言葉で、聞きたいことを質問するべきなのだけれど、熱のせいか、呂律が回らない。
そんな私の額に、Aさんは唇を近づけて、そっと囁く。
「今日は休みな……今まで頑張りすぎたご褒美だ」
甘く低いその声に熱くなったのか、はたまた風邪のせいで熱くなったのか、もう、わからない_____
「Aさんも……就寝しては……」
「俺の今の使命はしのぶの看病……だから、今日はずっとここ」
「生憎な」と、悪戯っぽく笑って、少し捲れた布団をかけ直してくれる。
「ずっと」と言われて、何故かとてもほっとして。
暖かい手のひらを反射的に追い求めて、掴んでしまう。
「しのぶ……」
Aさんは少し驚いた声を出したものの、力の入らない私のかわりに、強く、手を握り返してくれた。
「ごめんな……俺、あのとき必死でさ……」
『あのとき』とは、雨の中での所為を指していて……私はそれを思い出して、恥ずかしくなってしまう。
あんな、口内がとろとろになってしまうようなキス……
「いえ、私の方……こそ……勝手な勘違い、ばかり…………」
恥ずかしさを紛らすように言葉を繋げる。その合間に、「私ばかり嫉妬して……」と小さく呟くと。
「それだけどさ……すっげぇ嬉しいけど。実は俺の方がしてたりするんだよな」
困ったように笑う、Aさん。
Aさんは、私の手の甲を親指で撫でながら、ゆっくりと語り始めた……_____
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天霧(プロフ) - うっひょうぅぅぅう!しのぶさん最高ですよ! (2021年11月5日 20時) (レス) id: 29b58b93c0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - しのぶちゃんかわいいですよね、、!更新待ってます! (2020年8月12日 22時) (レス) id: ec54d11116 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - めちゃくちゃこの作品好みです!更新お願いします!!!これからもがんばってください!! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
イツキ - 二人のイチャイチャ楽しみです! (2020年5月10日 12時) (レス) id: a90c8d5aa0 (このIDを非表示/違反報告)
剣華 - いつもニヤニヤしながら見させてもらってます。ほんと好きです!次の更新も楽しみにしてます!がんばってください。 (2020年5月7日 12時) (レス) id: e2d859c4ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たつき | 作成日時:2020年3月30日 7時