不道徳な ひと【緑】vol.2

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「錦戸くん、やっぱりモテるね」


もれ聞こえる会話の中

『俺、彼女いるんで…』

“彼女”というワードに、美菜と顔を見合わせた



「は〜い、お疲れ〜」


「お前ら、ニヤニヤしとらんと、助けてくれてもええやんかっ」


「ごめんね？でも錦戸くん、なんか幸せそうだったから」


「どこがっ？」


「“彼女いるんで…”って説明してる時の顔、幸せオーラ全開だったよねっ」


「ふふっ、うん」


「そっ…れは、やなぁ」

宣言通り、錦戸は母校の英語教師になり、西崎先生と再会

4年間、積もりに積もった想いをぶつけ、お付き合いすることに

「幸せ…やからなぁ」


「錦戸くんのそんな顔、初めて見た」


「うわっ、惚気てる。そんで照れてるっ。こんな錦戸、レアだよね」


「んなっ、うっさい！そう言う中西も、安田先生の話する時、そんなんやぞっ」


「確かに〜。もう5年目？なのに、未だに仲良いもんね。美菜と安田先生」


「もぉ。私達のことはいいから」


「2人とも、連れてくれば良かったのに。安田先生と西崎先生も」

一瞬、ピンと空気が張り詰めた


「安田先生、忙しいみたいで…。子供達の絵 見てあげてて、気付いたら朝だったって事もあるみたいだから」


「西崎先生もな？今年 音大受験する子がおるらしくて、放課後も練習付き合ってあげてて、あんま時間ないなんて」


「そっか、残念……」


「また、時間ができたら、連れて来るから」

なんて2人とも言ってたけど、多分、私に気を遣ってるんだと思う

安田先生や西崎先生に会うと、私が大倉先生を思い出すんじゃないか…って


現に、あれから美菜と錦戸は、2人で来るか、1人ずつで来るかしかなくって、私の前では、先生達の話をする事もなかった



そんな美菜から

『ぬまっちゃんに、相談があるの。安田先生と一緒にお店 行っていい？』

そんな連絡が来たのは、1週間前



「なんか、良からぬ相談だったら、どうしよぉ〜」


「何だよ、“良からぬ相談”って」


「例えば…別れ話とか？」


「イヤイヤ、何で別れ話をわざわざ2人で、それもAにしに来るんだよ。中西さんと彼氏さん、仲良いんだろ？」


「そりゃ、もう」


「だったら、そんな心配する事ないだろ？じゃ、俺はお先に…」


「待ってっ！まぁくんもいてっ」


「俺っ？なんで？」


「なんでもいいからっ！お願いっ」



嫌がるまぁくんの腕、無理やり掴んで離さないでいると、ドアベルがカランと鳴った

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