不道徳な ひと【緑】vol.2

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彼女を車の中に押し込んで、荷物を取りに、裏口から店内へ


「佐久間さん、すみません」


「どうしました？」


「実は、Aさんが変な男に絡まれて…」


「はぁ？何やってんの？アイツ」


「あっ。でも、助けたんで大丈夫なんですけど。今日、このまま帰らせてもらっても、いいですかね？」


「もちろん。Aのこと、宜しくお願いします」

この間は、俺のライバルみたいな素振りやったけど、今日はあっさり『お願いします』と言われて

こっちとしては、願ったり叶ったりやけど…
とにかく2人分の荷物持って、急いで車に戻った


こちらの様子を伺う彼女
そない心配そうな顔せんでもええのに
別に、変なとこ連れて行こうなんて、思ってへんし

「Aさんも、立派な大人の女性やし、子ども扱いなんて、してへんよ？」

ホンマに、1人の女性としてみてる

彼女に想いを伝えるなら、あの場所で伝えたい


休みの日に学校なんて、数える程しか来たことないけど、鍵を開けて中に入り、向かった家庭科室

まぁ。確かに、俺目当てで家庭科の授業 選択する子もおるけど、昔よりも随分 減った。それは生徒達には“彼女がいる”と伝えているから

それもこれも

「彼女に…なってほしいって思ってる人は、いる」

ちゃんと君に、想いを伝える為なんやから


「……そっか。告白とか、しないんですか？」


「ん〜？しようと思ってるよ？」


「先生なら、きっと上手くいくと思いますよ？頑張って下さいね」

まるでひと事のように


「私、そろろ帰ります」

なんて言い出すから


「待ってっ」

彼女のこと呼び止めて


「Aさん、やねん」

立ち止まった その背中に




「俺が、好きなの」

そう伝えれば


「ウソ…ですよね？」

振り返った彼女の瞳は、ユラユラと揺れていた


ずっとアカンって思ってた

教師と生徒の恋なんてご法度。ヤスんとこが上手くいっても、俺はアイツみたいになられへん。そう思ってた筈なのに、気付いたら彼女のことばっか考えるようになってた

それは、彼女が卒業してからもそうで、四六時中…ってわけやないけど、ずっと心のどっかにはいて、偶に顔を覗かせて

そんな彼女に偶然再会するなんて、思ってもいなかった

俺の記憶の中の彼女は、制服姿の可愛らしい“生徒”
今の彼女は、自分の夢を叶えた、立派な女性


「ウソやないよ。俺 多分、ずっと前から…“沼田さん”って呼んでた時から、好きやった…と思う」

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