不道徳な ひと【緑】vol.2

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長い間、見つめ合ってた様に感じたけれど、それは一瞬の出来事で、すぐに動き出した車。私も慌てて前を向いた。

なんか、促されるまま助手席に乗ったけど、ここって、私が乗って良い席なのかな？

さっきも、直ぐに女の人に囲まれてたし、モテるし。

そんな事考え出したら、車に乗った事を、ちょっぴり後悔した。あのまま、お店の厨房に戻った方が良かったかも

錦戸には、告白するなんて大口叩いたけれど、隣にいる先生は、やっぱり大人の男性で、私じゃ不釣り合いなのかな？って自分に自信がなくなってきた


近くの駅で降ろしてもらおう

何気なく車窓を眺めると、見覚えのある景色が流れていく

「先生、どこ行くんですか？」


「うん？学校」

程なくして、私が通っていた高校に到着


「良いんですか？お休みなのに」


「別にええよ。俺、ここの先生やし」

先生について、職員用の入り口から中に入り、グルリと辺りを見回す

「………懐かしい」

パタパタと先を歩く先生の後ろ ついて行く。美術準備室、音楽室……前を通るたびに、当時の記憶が蘇る

美菜も錦戸も、色々あったけど、今はあの頃の思いを叶え、幸せになってる

私は………

前をいく、大きな背中を見つめていると


「はい、どーぞ」

正面のドアが開いた

2年間 お世話になった家庭科室

大倉先生との、思い出の場所


「相変わらず、先生 人気者なんですね」

部屋に置いてある教科書。私の時と同じ様に、ロッカーに隙間がなく立てられている

「おかげさまで、定員オーバー」


「そうですかっ…。昔みたいに、毎日告白されてたりとか？」


「あ〜ぁ。最近は、それはないかな？」


「えっ？そうなんですか？先生モテモテって聞いてたから。意外…」


「やって、ちゃんと言うてるもん」


「えっ？」


「彼女います。って」


「そ…うなんですね。先生 格好いいのに、彼女いない方がおかしいですよね」


「でもな？俺、彼女 おらへんねん」


「どういうこと…ですか？」


「彼女に…なってほしいって思ってる人は、いる」



“彼女”だろうと


“彼女になってほしい人”だろうと



大倉先生は、その人のことが好きで




それは多分、私じゃないと思う

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