不道徳な ひと【緑】vol.2

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『明日、頼むな』

そんなメールがヤスから届いたのは、パーティー先日の夕方


『おう、任せとき』


『大倉も、頑張ってな？』


『俺？何を？』


『何って。ひとつしかないやろ？』


『はいはい、わかってるって』

頑張れとか言われんでも、わかってる。明日が終われば、俺と彼女との接点はなくなる

“先生と教え子”

その関係は、一生続くもんやけど、俺は……


その関係を打破したいと思ってる

正直、ヤスのパーティーよりも、彼女のことが気がかりで

「アカン、はよ寝よ」

ガラにもなく緊張して、早めにベッドに潜り込んだ


次の日の朝

早く目が覚めたので、随分と早かったけれど、お店に向かった

厨房のドアを開けたら、親しげに肩寄せ合って話をする、彼女と佐久間さんの姿があった


おめでたい日なのに…

頭ではわかってるのに、態度に出てしまう俺は、この中で一番子どもやと思う

彼女の隣におると、もっとイライラが顔に出てしまいそうで

「佐久間さんの方、手伝ってきて？」

なんて、彼女を遠ざけても、何の解決にもならへんのも わかってる


「沼田さんも、佐久間さんと仲 ええやんか」

なんて、ただの負け惜しみ。カッコ悪いよな、俺



佐久間さんに、着替えに行くよう促されて2階へ

いつもは、物置になってる2階が、今日は主役2人の控え室

パーティーは始まっているので、そこを借りて着替えさせてもらう事になっている


俺は断ってんけど

『ダメッ。大倉かて勝負の日なんやから、おめかしして戦ってきてっ』

何故か、俺より気合の入っているヤス

『俺の友達が、カッコ良くしてくれるから』

その熱意に負けて

「じ…じゃあ、お言葉に甘えて」

ヤスの提案を受け入れた


さすがヤスの友達、そして美容師さん。会話も弾んで、セットなんてものの10分程度で終わって、後は世間話

話がひと段落したところに、お友達さんの携帯が鳴った



「向こうも、準備できたみたいですよ？」


「向こう？」


「はいっ。あっ、ヤスから伝言です。

『今は、あの頃とは違う。大丈夫やから、思いっきり行ってこい』

だそうです」


「そうですか。ありがとうございました」



そうよな

あの頃は、ずっと引っかかってた


彼女が“生徒”やって事に


せやから自分の気持ちに気付かんふりして


でも、今は違う

俺には“今”しかない


ふうっと一息ついて、控室のドアを開けた

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