不道徳な ひと【緑】vol.2

・072 ページ22

「お疲れ様で〜す」

平日は学校、土日はパーティーの準備。この1ヶ月、休む暇もなく毎日働いて、これまでの俺やったら、こんな生活 考えられへんかったけど

「おーくらがな？僕らのパーティーの料理、手伝ってくれんねんてっ」


「大倉先生とぬまっちゃんが作ってくれるなら、みんな喜んでくれるね」


「ほんまやなぁ〜、楽しみやわぁ」


「うんっ」


こんな風に、幸せオーラ全開の2人に

「「宜しくお願いします」」

なんて言われたら、頑張らへんわけには、いかんやん？


「今日はデザートやったっけ？」


「はい。デザートって専門外だから、中々良い案が浮かばなくって」


「あれ？佐久間さんは？」


「あぁ…まぁくん甘い物 苦手なんで、形になったら呼んでくれって」


「そぉなんや…」

いつもメニューを決める時は、3人で集まっていた。佐久間さんが来ぉへんって事は

………2人きり

なんや、嬉しいような緊張するような……


ペラペラとレシピ本をめくりながら、考え込む彼女を見ていたら、高校生だった頃を思い出した

「……あっ」


「どうしました？」


「いちごミルク…」


「いちごミルク？」


「中西さんに、聞いた事ない？」


「さぁ……」


「ヤスに初めて奢ってもぉたんが、いちごミルクで。子ども扱いされたって落ち込んだって話」


「……知らないかも」


「んで、再開した時に出してもぉたんが、コーヒーで、やっと認めてもらえた気がして嬉しかったって」


「そっか……じゃあっ。いちごミルクとコーヒーベースで考えてみましょっか」


「せやな。コーヒーの方は、甘さ控えめにして」


「いちごミルクの方は、甘めで可愛らしく…」


「方向性、見えてきたな」


「そうですね。じゃあ、まぁくんに連絡してきます」



『もしもし、まぁくん？あのさ…』

漏れ聞こえてくる会話は、タメ口で


「まぁくん、30分位で来るそうです」

俺には、敬語のまんま


「あの…さ？」


「はい」

この関係、どうにかしたいって思うけど


「佐久間さんとは、付き合い長いん？」


「あ〜….そうですね。物心ついた時には、側にいましたから…」


「もしかして、好き……とか？」


「えっ？」


「佐久間さんのこと」



こんな風に、さぐりを入れる事しか、出来ない自分

ホント、情けないな……


でも、今回は

今回だけは、失敗したないねん

・073→←・071

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す