不道徳な ひと【緑】vol.2

・067 ページ17

やられた…と思った

ヤスのやつ、彼女がここで働いてるのを知った上で、この店のランチに誘って、あえてのドタキャン


何なん、もぉ……


「大……倉センセ？」

もう二度と、彼女の口から、こんな風に呼ばれる事なんて、ないと思っていた


「元気やった？」

最初はぎこちなかった会話も、すぐに昔の感覚を取り戻して、ポンポンと 心地よく進む

昔と全然変わっていないと、彼女に言われて


「沼田さんも、全然変わってへんよ？」

何気なく発したその言葉に


「まだまだ“子ども”って事ですか？」

と、俯く彼女

決してそんな意味で、言うたんやない

昔のまんま、夢に向かって頑張ってるんやね。っと事を言いたかっただけ


再開した彼女は、見違える程 綺麗になっていて、立派な大人の女性


それをどうしても伝えたい

でも、上手く言葉に出来なくて、思いつくまま、喋っていたら


「褒めても何も出ませんよ？」

なんて、彼女に言われてしまった。それでも

「沼田さんにも、会えたし、その上 お手製カレーまで食べられたし」

こんな事 言うてまうのは


『ちゃんとあいつん事、見てやって下さい』

って言う、錦戸くんの言葉があったからかもしれない。



「そういえば、先生聞きました？安田先生と美菜が結構するって話」

急にふられた、ヤス達の結婚話


「そぉいや、ここでパーティーするんやろ？あの2人」


「あっ、はい」


「あの…さ？突然でアレなんやけど…それ、俺にも手伝わせてくれへんかな？」


2人のために、何かしてあげたいって思った

それと同時に、このままやと、彼女との繋がりが無くなってしまう

そう、思った


「えっ…と」

困った表情の彼女。でも、俺も後には引かれへん


「アカン…かな？」


「でも、先生 裏方じゃなくて、ちゃんとパーティーに出席した方が。新郎の親友だし」


「それは、沼田さんかて同じやろ？新婦の親友やんか」


「それは、そうですけど…」

困った挙句

「ちょっと、待っててもらっても、いいですか？」

と、厨房に消えていった


暫くして

「お待たせ致しました」


彼女と現れたのは

「料理長 兼 オーナーの、佐久間と申します」


多分、“イケメン 幼なじみ”さん

俺より若いのに、貫禄があって、頼りになりそう

一瞬、たじろいだけれど


「初めまして。大倉 忠義と申します」



このは人には、負けられへん




そう思った

・068→←・066

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す