不道徳な ひと【緑】vol.2

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大倉先生に、お礼とお別れを言いたくて訪れた教室

“ありがとうございました”

は言えたけど、別れの言葉はどうしても言えなかった


『絶対、店 行くから。楽しみにしてる』

なんて、大倉先生は言ってたけど、この世に“絶対”なんて存在しない事、わかってる


もしも私が、運良く自分のお店を持てたとしても、それを大倉先生に知らせない限り、先生は気付かないと思う

そうなったとしても、今のところ、私から先生に知らせるつもりは、更々ない

きっと、先生は私のことなんて忘れたいに決まってる


それなのに、『さよなら』と言えなかったのは、また 会いたい…って想いがどこかにあったのかもしれない



「Aさん、どうしたの？」


「えっ？」


「なんか、心ここに在らずって感じ」


「ん〜ん、そんな事ないよ？」

折角、後輩達が開いてくれた卒業パーティー。そこには勿論、東くんもいるのに、気もそぞろなのは、“絶対 行くから”と、必死に訴えてた大倉先生の顔が、頭から離れなかったからだった




「Aちゃん、今日 居残りどう？」


「あ〜、ごめん。私 今日バイトなんだ」


「そっか、わかった。じゃあまた明日ね」


「うん、またね」

専門学校に入学して、本格的に授業が始まると、なかなか自分の時間も取れなくなった

それでも、先輩から

『実地訓練も兼ねて、バイトもいいよ』

と教えてもらえば、何とか時間をつくって、イタリアンレストランの厨房のバイトも始めた


こんな状態では、デートもままならず、東くんともだんだんとすれ違うようになって、結局 卒業して3ヶ月でお別れすることになった

美菜や錦戸も忙しいみたいで、メールでたまに話はするものの、中々会う機会がなくて


「美菜〜、会いたかった〜」


「ふふっ、私もっ」

美菜と再会したのは、夏休みに入ってからのことだった


「錦戸くん、残念だったね」


「ゼミの合宿だっけ？大変だね、大学生も」


「ぬまっちゃんは？学校 大変？」


「う〜ん、大変かな？でも楽しいよ？」

なんていう、お互いの近況報告から


「どぉ？最近 安田先生とは。上手くいってんの？」


「えっ？あぁ……うん」

恋愛話へと、移行していった

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