第26話ー藤咲あかりー ページ30
「あかりー、早く起きな」
......
「あかりー、もう9時すぎるよ」
...........
「あかりー?」
「ニャー」
「あ、ちょっと佐助!」
「ん....。なに....?顔になんか....」
うわ、顔....。
「ほら、佐助。あかりの顔舐めちゃダメでしょ。」
........
起きて早々猫に顔を舐められ、その猫を璃埜が私の顔から引き剥がそうとしている。
「昼前には出発するからあかりも早く起きな。」
「んー。」
上半身だけは起きあげるが布団から出るのはなんだか名残惜しい気がする。
もう少しだけぼーっとしてよ、なんて思いながら重い目を擦る。
徐々に目が覚めてきて視界もクリアになってきてはいるが相変わらずぼやっとした世界だ。
そういえば、眼鏡はちゃんと荷物に入れてたっけ...。
ようやく布団から出る気になってノロノロとリュックの方へと進む。
中を探ると硬い眼鏡ケースが出てきた。
「よかった...。」
普段はコンタクトをしているがこんな世界ではいつ何が起こるかなんて誰にも分からない。眼鏡もちゃんと持っておかないと。
とは言っても最近の科学技術っていうのはすごくて、コンタクト1つで1年は持つのだ。
ばあちゃんが言うには昔はせいぜい2週間が限界だったらしいがホントにこの時代に生きてて良かったと思う。
今現在こんな状況に陥ってさえなければ。
今度は鮮明になった視界で窓から下の庭を見下ろす。夜見た時にはいなくなっていたバケモノが今度は何人かいる。
「人」という単位が正しいのかは分からないが。
まぁ、いいや。今は考えても仕方ない。
支度の続きをしようと、またリュックを探る。
眼鏡の入ったケースをしまい、昔お母さんに貰ったお気に入りのくしを取り出す。
昔はよく髪を梳かしてもらったなー、なんて思いながらボサボサの頭をほんの少しだけましにする。
朋美とばあちゃんは元気かな.....。
「あかりー、朝ご飯。」
「よっ、と。さんきゅ。」
持ってきてあったスティックタイプの栄養食を璃埜が投げてきて、それを私はキャッチしてリュックの横に置く。
まずは支度を全部終わらせてしまおう。
と言っても着替えて顔だけ洗えばもう終わりだけど。
そのどちらをもすぐに終わらせてリュックを背負う。
「それ食べないの?」
「歩きながら食べる。」
「ふーん....気を付けてね。」
「ん。」
私が返事をするのを待って璃埜もバッグを肩からかける。
麻友の部屋から出て階段を降りる。
急ぐけど決して焦ってはいけない。
二度目の出発は慎重に。
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作者名:詩雨・yuuhi | 作成日時:2018年8月10日 19時