第21話ー藤咲あかりー ページ24
手に璃埜の温もりを感じて、恐怖が少し薄れた。
そして改めてソファーに寄りかかるようにして手を繋いでいる二人を見るとやるせない気持ちになった。
私がもっと早く決心していたらこうはならなかったかもしれないのに.....。
.....違うか。
何でもかんでも自分に背負わせちゃいけない。それに、少なくとも私だったら自分の死を誰かの責任にはしたくない。
そっと璃埜から手を離して、私達は二人で麻友の両親に手を合わせた。
『麻友のことを守れなくてごめんなさい。』
『私達は今麻友のおかげでここにいます。』
.......。
目を開けて立ち上がる。
二人を改めて見ると、麻友は両親にとてもよく似ていると思った。
お父さんからはふわふわのくせっ毛。
お母さんからは優しそうな顔立ち。
........
「.......?」
この二人、なんで.....?
「あかり、この二人.....」
「ん.....。」
璃埜も私と同じことに気が付いたみたいで、泣きそうな顔をしていた。
あの時、麻友がいなくなった時私達はまともに頭が回っていなかったけど記憶は鮮明だ。
確かに麻友はあの時目が真っ赤に染っていた。
原因は多分、バケモノにつけられた傷。
私はいつも歩く時二人の後ろにいたから分かるけど、あの時麻友が転んでつけた傷はどう見ても過擦り傷なんかではなかった。
後から璃埜に言ったら璃埜はバケモノがつけたんじゃないかって言ってた。
確かに“そういうもの”だと思ってしまっていたがあの時アレは口の周りが赤くなっていた。
だからバケモノはもしかして人を喰うんじゃないかって。
結局確かめる勇気は出なかったけど、今ここでソファーに寄りかかっている二人がそれが真実だと私達に教えてしまった。
手足つく無数の噛み跡。
血にばかり目がいっていて気付かなかったけど思っていた以上に損傷は酷かった。
でも噛み跡では無いようなものもあった。
頭の横についた丸い傷のようなもの。二人とも同じようにあった。
三週間と二日ぶりに見る世界はどこまでも残酷で、それは容赦なく私達に降り掛かってくる。
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作者名:詩雨・yuuhi | 作成日時:2018年8月10日 19時