第14話−藤咲あかり− ページ16
カチ
カチ
カチ
カチ
規則正しいリズムを刻むその音を何時間くらい聞いてるんだろう?
1時間か2時間か.....それよりずっと長い間聞いてた気がする。
いい加減嫌になって立ち上がってトイレに行く。やっぱりこの音だけはどうにも慣れない。
いつもならギシギシ言うはずの床が音を鳴らさない違和感はあったけど今が夜、ましてや夜中でなければ気にすることも無いことだ。
そっと璃埜の方を振り向いたらこっちに背を向けて寝てたから起こさないように注意深くドアを開けるが無音。
私のアパートってどんだけボロいんだよ.....。
勝手に明かりがついて鏡に自分の顔が映る。
ボサボサの頭と青紫のクマ。何年も付きまとってるこいつは多分一生消えない。
........でもまぁ、しょうがないか。
水道に手を伸ばしてぬるいお湯を出す。それで顔を洗う。
ちょっと暑くしすぎちゃったかなぁ。
ふわっふわのタオルに顔を埋めるとやっと眠くなる。
そういえば璃埜ってふわふわのタオル好きじゃないのに璃埜の家に置いてあんのいつもふわふわだ....梨華子さんが好きなんだっけ?どうだっけ....?
あとで璃埜に聞いてみよう。
「まだ眠れないの?」
「............
おどかさないでよ。」
トイレから出ようとした瞬間璃埜に先をこされてドアを開けられてしまった。
びっくりして暫く固まっていると璃埜は呆れたように口を開く。
「ココア出そっか?」
「うん......。」
「まったく、こんなに暑いのによく飲めるよね。」
そう言いつつも手際よくココアを準備してくれる。マシュマロの袋も出してくれているあたり璃埜以上に私を理解してくれる人はいないかも。
眠れない時にいっつも飲むマシュマロがたっぷり入った温かいココア。小さい頃からずっと同じものを飲み続けてきた。
作ってくれる人は変わってしまったけど.......。
「はい。」
「ありがと.....」
両手でカップをつつみズズっと音を立ててココアを飲む。少しずづ溶けていくマシュマロを見てなんだか悲しくなった。
「それ飲んだら寝るよ。明日は.....麻友の家に行くんだから。ちゃんと休まないと。」
「ん......」
マシュマロが完全に溶けないうちに全部飲み干す。舌が少し熱くなった。
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:詩雨・yuuhi | 作成日時:2018年8月10日 19時