第13話−藤咲あかり− ページ15
「それで、どうするの?」
「今週中にはここを出たい。あと、できれば麻友の家に.......」
言っていいのか分からずに、言葉を詰まらせてしまう。おずおずと璃埜の方に目を向けると悲しそうな目で微笑んでいた。
「いいよ。麻友のところ行こう。それまでにお母さんから連絡来るといいんだけど......。」
「ん...。そうだね。」
そっか......。璃埜はまだなんだ。
まだお母さんから連絡が来ていないんだ。
私はもう朋美から連絡が来たからいいけど、こんな状況でいつスマホがいつ使えなくなるかなんて分かったもんじゃない。そんな中でここを出るのは「諦める」のと一緒になる。信じるのを諦めるのと一緒になってしまう。
「璃埜」
「ん?」
..............
「......。やっぱいいや、何でもない。ありがと。」
璃埜は少し不思議そうにしながらまたスマホに目を向けた。
「ごめん」とか「申し訳ない」とか言おうと思ったけど、そんなこと言わなくたって多分璃埜は分かってる。私がそう思ってることも全部。
だから「ありがとう」だけでいいや。
「それで、いつ行こっか?」
「あー.....。来週とか?」
「うーん....もう少し早くてもいいんじゃない?明明後日とか。」
「そんな早くていいの?」
「うん。お母さんはきっと大丈夫だよ。」
璃埜はつよいなあ。本人に直接なんて悔しいし絶対言ってやらないけど。
こういう所はつくづくお母さん似なんだろうなって思う。
璃埜のお母さんの梨華子さんは正義感があって真面目で優しくて強い人だ。
外務省の結構偉いところで働いてるみたいだし、璃埜から見たら人間の模範みたいな人になる。
だから、たぶん.....きっと大丈夫だ。また会える。
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作者名:詩雨・yuuhi | 作成日時:2018年8月10日 19時