スパイダー【ars M.A】 (ページ8)

今日:11 hit、昨日:17 hit、合計:312,146 hit

オページ8

あの子に近付く為の、とびっきりの嘘。

「嘘から出たまこと、とかって言うしね！」

もしかすると、俺がピアノを好きになるかもしんない。

「あ...でも、レッスン受けられるかどうかはまだ分かんないんだけど」
「何で？」
「俺を家に入れる事になるから、お母さんに相談しなきゃって」
「ふーん」

カズ君は、またゲームを再開。
俺は、ベッドにゴロンと寝そべった。

「人んちで寝んなよ？」
「寝ないよ。ちょっと考え事」

そう言って目を閉じる。

気が付いたら俺は床で寝ていて、カズ君がベッドで寝ていた。
何か腰が痛い。絶対俺、蹴り落とされてる。

・

そこからの一週間、俺は一日が48時間くらいあるんじゃないかな？って位に時間が進むの遅く感じて。
早く早く週末やって来い！って、思い続けてた。

「ねぇカズくん、息苦しい...」
「病院行けよ」
「病気じゃないもん」

二時間目の後の休憩でトイレ行った時にバッタリ会ったカズくんと「昼休みに食堂で！」って約束して(俺が一方的に)向かい合った食堂の席。
目の前のカズくんは、きつねうどんを啜ってる。

「でも病気なのかな...恋の病って言うよね？」
「キッモ」
「何だと！？」
「キモイわ、バカ」

俺に吐き捨てえるように言ってお揚げを食べてる。

「食欲も無いんだよね...」
「カツ丼食ってる奴が何言ってんの？」
「いつもは大盛りでしょ？今日は普通盛りなの！」

普通盛りのカツ丼を食べながら、あの子のコトを考えた。
今日は金曜日。
もうすぐ会える。

「ねぇ、どう思う？」
「何が？」
「お返事。レッスン、して貰えるかな」
「んー...半々じゃね？」

半々...。
そっか、そうだよね。決めるのはあの子のお母さんだもん。

「でも、あの子は教えてあげたいって言ってた」
「うん。それ何回も聞いた」
「もしダメだったらさ、カズ君の部屋に出張レッスン来てもらおっかな」
「それ、初耳だわ」
「良い？」
「良い訳あるか！何でオレの部屋なんだよ、お前の部屋で良いだろ」
「だってうち、ピアノ無いもん。カズ君の部屋にはキーボードあるでしょ？」

俺が言うと、カズ君は「寝言は寝て言え」ってシラーっと言った。
ひどい。

「あ。『冗談は顔だけにしろ』の方が良かった？」
「ひっど！」
「どっちが酷いのよ、人の部屋を勝手に使おうとしてたくせに」

カズ君は丼を持ちうどんのお汁を飲んで、はぁ...と満足そうに大きく息を吐いた。
俺もトンカツを齧る。