スパイダー【ars M.A】 (ページ21)

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「すっげ...ありがと、先生」

やばいやばい、めっちゃ嬉しい、どうしよう。
顔、ゆるゆるになってないかな。
必死で顔に力を入れる。

「雅紀くん、この後って何か予定ある？」
「え...？」
「あ...あるよね！お誕生日だし、クリスマスイブだもんね」
「えっ...え、ううん！無いよ、予定無い！.....でもどうして？」

心臓がどんどん早打ちになる。

「お祝いしたいなぁと思って」
「マジで？」
「ケーキ、用意してあるの」
「うっそ」
「私の部屋で食べないかなー...と思って」

誕生日はどんなワガママを言っても良いんだって、誕生日だけは王子様なんだからって、うちの母ちゃんとカズくんのおばちゃんが言ってくれてた。
でもそんなの、小学生までの話で中学生になった頃から誕生日でもワガママは許して貰えないし、高校生になったらプレゼントも商品券とかになっちゃって。
もう誕生日でも王子様じゃなくなったんだなー...なんて思ってたのに。

「食べたい」
「じゃ、先に部屋行ってて？ケーキ持って行くから」

先生は久し振りに、誕生日は特別な日なんだって思わせてくれた。

先生の部屋に入り、出窓の前まで歩く。
そこにはミッキー数体。
ハート型のライターは、見当たらなくなっていた。

今日もまた床に座って、先生が戻って来るのを待つ。
ティーカップとケーキの箱をお盆に乗せて部屋に入って来た先生は、また「何で床！」って笑った。

「何かここが落ち着くから」
「そっか。何か分かる気もするけど」

そう言いながら俺の隣に座った先生がローテーブルに置いた紅茶。
それと、箱から出したケーキ。

「え、先生...これ、マジで...？」
「ん？フフッ、美味しそうだよね」

てっきりカットケーキだと思ったのに、それは丸いホールケーキ。
『雅紀くん Happy Birthday』ってチョコのプレートまで乗ってる。

「これ、前に雅紀くんが美味しいお店って教えてくれたお店のケーキだよ」
「...すげぇ」
「実は私まだ食べれてないから、雅紀くんのケーキなんだけど私も食べるの楽しみなの」

先生が照れ臭そうに笑いながら、ケーキにロウソクを立てていく。

「あ...火、つけなきゃ...」

立ち上がろうとした先生の手首を掴んだ。

「あのライター使うの？」
「.....あれしか持ってないから...」
「じゃあ、火はつけなくって良い」
「でも...」
「良いから」

掴んだ手首を引っ張り、先生の身体を引き寄せる。

その瞬間、テーブルの上のティーカップがカチャンと音を立てた。