1-1.新天地 ページ1
今度こそは上手くやろう。
大きな門をくぐりながら、私は固く決意した。
＿＿それなのに。
「関西の学校から転校してきたAさんだ。Aさん、これからよろしくな」
すぐ隣にいるはずの先生の声が遠くで響いている。
教室に入った瞬間に、私はとある男子生徒に目を奪われた。明らかに学校指定のものではな、あるいは改造しているであろう紫色の学ランに、逆立てられた髪。もちろん、整髪剤の使用は校則で禁止されている。いわゆる不良だ。しかも典型的な、昭和の漫画に出てきそうなタイプの。
どうして先生は何も言わないんだろう。いやもしかしたら、先生たちでも手が付けられないほどの問題児なのかもしれない。
だとしたら最悪だ。
幸い向こうは窓の外に視線を向けていたため目が合うことはなかったが、それでも穏やかな春の日に不釣り合いな冷や汗が止まらない。なんとか笑みを貼り付けて「よろしくお願いします」と頭を下げた。
今日は私にとっては転校初日かつ、他の生徒にとっては二年生に進級して初めての登校日のため、一限目は席替えと自己紹介をすることになった。
私の席は窓際の列の前から二番目。例の男子生徒の席をこっそり探すと、窓から三列目の一番後ろだった。席が近くないことにほっと胸を撫でおろす。
自己紹介は淡々と進んだ。気づけば自分の番が近づいていて、私の一つ前の席の女の子が立ち上がる。
「空野葵です。よろしくお願いします！」
そう言って人懐っこい笑みを浮かべた。いかにも“最近の女の子”という感じで、ちょっとキャピキャピしている印象だ。
次は私の番だ。
「AAです。よろしくお願いします」
先生が「わからないことだらけだろうから、みんな教えてやってくれ」と言うと、教室のところどころから「はーい」という声が聞こえた。
席に座ると、空野さんが私を振り返って「よろしくね」と笑いかける。突然のことに少し驚きつつ「よろしく」と返した。
いよいよ例の男子生徒の番だ。彼は静かに椅子を引いて立ち上がる。座っていた時は見えなかったが、特徴的なズボンを履いているのが見えた。あれはもしかしてボンタンというものではないだろうか。生で見たのは初めてだ。
「剣城京介」
とうに声変わりが済んでいる低い声で名前だけ言った彼に、どこからか「ええっ、それだけ？」という野次が飛んできた。無謀な生徒がいたものだ。
彼はぶっきらぼうに「よろしく」と付け加えて席に着いた。
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春間(プロフ) - 名無し40482号さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！ 励みになります。 (2020年10月7日 13時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し40482号(プロフ) - とても綺麗で読みやすい小説で、感動しました…（ ; ; ）更新楽しみにしてます。 (2020年10月6日 14時) (レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - Ruiさん» ありがとうございます。申し訳ないのですが、占ツクの使い方がよくわかっていないので今回は遠慮させていただきます。コメントありがとうございました！ (2020年8月9日 11時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
Rui - 初めましてタイトル凄くいい感じ！もしよかったら好きな作品出来るイベントもし参加出来たら嬉しいです勿論CSS付きも可能です。「 あなたの小説読ませて下さい。」です。 (2020年8月9日 0時) (レス) id: 79cb60a812 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - 充滞さん» ありがとう、頑張ります！ (2020年8月7日 19時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2020年8月5日 11時
