桜前線 2【GO】 (ページ8)

今日:28 hit、昨日:5 hit、合計:3,234 hit

55　穏やかな日常ページ8

例の風呂事件から三日が経ち、神童くんとも普段通り話せるようになった。しかし、三日(・・)かかった。それまでは結構地獄だった。いつも一緒に登下校しているが、なにかと用事を作られて避けられていた。朝食と夕食も時間をズラして摂っていた。神童くんは結構繊細な人だった。とはいえ今は何事もなかったかのように会話できているので一安心。この前現実に帰ったことを一応伝えておこうと思い、帰り道で伝えた。

「起きたら職場のデスクにいて。随分と長い時間こっちにいたから、仕事のやり方も忘れちゃってたよ」
「それは大変でしたね。それで、どうやって戻って来たんですか」
「急に頭が痛くなって。その時はなにしてたかなー。次に目が覚めたら、神童くん家のお風呂に入ってたよ」
「あの日ですか」
「そうそう」
「＿＿あの時は...すみませんでした。いつもは執事に確認してから入るんですが、その日は少し疲れていて、確認もせずに入ってしまいました」
「気にしないで」

帰宅後食事を済ませ、入浴し、部屋に戻ると、今日の試合を思い出しながら体を動かした。

「旋風陣か。すごい技だったな。ほッ、と」

試合を思い出しながら、逆立ちをした。足の高速回転をしようと試みるも難しい。絶対あれは高等技術。木暮さんってすごい。
寝転んでからおもむろにイナッターを開く。今日は浜野くんの投稿はない、珍しいこともあるもんだな。イナッターはグループ機能以外にも、繋がりのない他の人の呟きを見ることができる。その中で目に留まったのが一つの投稿だった。

今日も抜け出したのがバレちゃった。早くサッカーできるようになりたいな

その人の投稿を遡ってみると、どうやら入院していて、そこはサッカーが禁止されている環境らしい。きっとサッカーが好きな人なんだろう。サッカーが禁止されているのは、病院のルールなのかも。好きなものを禁止されるのは辛いと思う。たしかにルールは守るべきだけど、少しくらいならサッカーしても許されてもいいんじゃないか。そう思い、応援のメッセージを送ることにした。すると、間も無く返信が来た。

ありがとう!

その会話をきっかけに、やり取りが始まった。いわゆるメル友みたいなやつだ。最近楽しかったことや今日食べたご飯、そしてサッカーのことについて話した。今は検査入院をしていて、それ以外は何もすることがないので暇らしい。彼とのやり取りが徐々に日常となっていった。