桜前線 2【GO】 (ページ49)

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96　イシドシュウジの正体ページ49

部屋の前に立ち、コンコンとノックする。天馬くんの部屋には一度入ったことがある。

「入っていいか」

数秒経って、中から声が聞こえてきた。

「...はい」

ドアを開ける。天馬くんはボールを抱えながら、サスケの隣で床に座っていた。

「突然来て悪いな。天馬と話したかったんだ。...これ、雷門のマークじゃないか」
「そのボール、イシドシュウジのなんです」
「なんだって」

天馬くんによると、先ほどイシドシュウジと会って話したらしい。彼が放ったシュートのフォームは豪炎寺さんに似ていたという。それが事実なら、サッカーを愛しているはずの豪炎寺さんがなぜサッカーの自由を奪うのか。天馬くんがサッカーを始めたきっかけが、実は最大の敵だった。それらの事実に混乱しているというのが実情だった。

そんな彼に対し、拓人くんは革命の始まりを語った。

「お前が吹かせた風は俺たちを動かし、そして、全国に広がっている。それはわかってるよな」
「はい」
「俺はお前に教えられたよ。一番大事なのは、サッカーが好きだという気持ちだって。今日はお前、まだボールを蹴ってないだろ。河川敷に行かないか」
「...」
「俺はお前とサッカーをやりたい。革命とかそういうの関係なしで、ただボールを一緒に蹴りたいだけだ」

この状況は感慨深い。以前天馬くんが拓人くんの部屋に押しかけて、フォルテシモを見せてほしいと言った時のことを思い出す。今は逆の立場というわけだ。天馬くんは立ち上がらない。体を丸め、体操座りをしている。塞ぎ込んでいるみたいだ。今日の出来事が本当にショックだったのだろう。

「その気になったら来てくれ」

河川敷に移動し、しばらく待っていると天馬くんは現れた。

「キャプテン！俺、サッカーをやりたいです、雷門のみんなと！もう迷いません。思いっきり楽しみたい。俺、サッカーが大好きですから！準決勝、勝ちましょう」
「ああ。ホーリーロードを勝ち抜いて、聖帝の言う"答え"を見ようじゃないか」

彼らを眺めていると、じわりと心が温かくなる。次は準決勝。念願の目標が叶う直前まできている。既にゴールという目的地は見え始めた。二人がボールを追いかけて走る姿をただ見守っていた。