91 vs 幻影学園 [1] ページ44
「伝言というのは一方通行です。天城先輩の思いも知らずにただ伝言を伝えるだけでは、彼の心に響かないと思います。もしかしたら、過去を思い出して心を閉じてしまうかもしれないし、誤解を生む可能性だってある。でも、直接話すと、天城先輩の気持ちも汲み取ることもできるし、正確な情報を伝えることもできる」
「...」
胸あたりでぎゅっと拳を握りしめている。おそらく不安なのだろう。それも当然だ。不和があった後、再会して一対一で話し合うのは、誰だって緊張するし避けたいことだろう。
「あと数分で試合が始まります。ハーフタイムの時、私が天城先輩をここに連れてきます。その時、話せますか」
彼女はこくりと頷いた。彼女の意思を確認した後、私はグラウンドに直接向かった。彼女の抱く不安より、問題を解決したい気持ちの方がきっと勝ったのだろう。
試合会場に入ると、ピンボールのピッチがそこにはあった。本当にピンボールみたいだ。これでどうやってサッカーするんだと思うくらいに障害物が立ち並ぶ。試合前、演出として派手にパイロテクニクスが用いられて火花が飛び、観客席から歓声が上がった。
試合が始まると、早速ジェットバンパーやフリッパーと呼ばれる機能が機能した。普通ピンボールというと、プレイヤーはフリッパーを動かして金属のボールが落ちないように打ち返しながらターゲットに当てて得点を重ねる。このスタジアムの場合、金属のボールはサッカーボールに相当する。バンパーやフリッパーはボールの動きに自動で反応する。ボールの動きをコントロールできるのはその場に立つ選手のみ。なんて難易度の高いスタジアムなんだ。幻影学園が加速帯を含めてスタジアムの機能を使いこなしている。加速帯は私のシュート技と相性が悪い。ピアニシモは不意を狙って打つものであり、加速帯はど真ん中にあるので不意を突いたシュートは困難だ。
マボロシショットをどう防ぐかが鍵になる。この技は防御不可能であり、このままずっと対策できないと失点を重ねてしまう。今の雷門はマボロシショットに対処できないので、ひたすら得点を狙うしかなかった。鬼道監督がバンパーのタイムラグを指摘してくれたお陰で、加点を狙うゴリ押し戦法は現実的となった。剣城は鬼道監督からの一度の指示で、もうバンパーを使いこなしている。私も頑張らなきゃ。優秀な選手が隣にいると、正直焦る。
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年1月19日 13時
