桜前線 2【GO】 (ページ39)

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86　気分はお姫様ページ39

家に帰ると、拓人くんが正装をしていた。こちらに気づくと、焦った様子で話しかけてきた。

「帰ったか」
「これからどこかに出かけるの？」
「ああ。すっかり忘れていたんだが、財閥のパーティーが今夜あるんだ」
「パーティ!?」
「よければAも来てほしいんだけど、来れそう？」
「待って。すぐ準備するから」
「いや、準備は執事たちにしてもらう」

拓人くんがパンパンと顔の横で両手を叩いた次の瞬間、メイドたちが迎えに来た。

「ドレスアップしてくれ」
「かしこまりました」
「えっえっ」

連れられたのは別部屋。大きな鏡がある。

「どのドレスをお召しになりますか」
「えっ。まさか、これ全部の中から選んでいいんですか」
「ええ」

パーティードレスなんて着たことない。人生初経験。いっぱいありすぎて選べない。

「お時間が迫っておりますので、お早めにご決断ください」
「え、ええと、じゃあこれで！」

シックなパーティードレスを選んだ。手伝われながら急いで着替えると、次はメイクアップを施された。薄くアイシャドウをつけて、ほんのり赤みのかかるチークも少々。

「わあ、とてもお似合いですよ」
「本当ですか。嬉しいです」
「拓人様もお喜びになられるでしょう」

玄関を出ると、車が待機していた。既に拓人くんは乗車していた。

「お待たせ」

拓人くんは驚いたように、しばらくこちらを見つめていた。そして、優しく微笑んだ。

「綺麗で思わず見惚れてしまったよ」

差し出された手を取り、足元に気をつけながら車に乗った。