80 島の特訓 ページ33
早朝、空襲警報のようなサイレンが鳴り響いた。この島にいると、辺りが軍事施設のように思えてしまう。3日後にフィフスセクター公認チームと試合をしろとの通達だった。試合会場は島の中央のゴッドエデンスタジアム。高くそびえ立っているので、どの位置からでも場所がよく見える。鬼道監督たちは人質として囚われているらしく、試合を拒むことはできない。
特訓場所を探すため、手分けして散策する。島について知ることは大事だ。島に詳しい剣城や大人たちが先導した。島の森には地蔵がいて、それは島を守る神様だと剣城は語った。突然少年により襲撃を受けたものの、試合中にヤギが現れて天馬くんが助けた途端、その少年は特訓場所として森を使わせてくれることとなった。白竜たちのチームは圧倒的パワーで押さえつけてくるのに対し、彼らのチームは圧倒的無気力にさせてくる。サッカーをしている筈なのに、闇に引き摺り込まれているような感覚。全てを見切られていて、掌で転がされている。
チームに分かれて島での特訓を各々始めた。サンドボードを吹雪さんが指導してくれることとなった。
「ボディバランスをつける特訓だよ」
いざやってみると、すぐに転倒してしまう。狩屋ならきっと軽々とこなしてしまうんだろうなあ。島に僅かな期間しかいなかったという剣城も皆と同様に、このサンドボードには苦戦していた。何度も転倒した。靴には砂が入り込んで重いし、足が埋まって立ち上がるのも一苦労。それでも、チームの仲間は手を差し出し、助け合った。輝くんの手を掴み、立ち上がった。ここにはスキー場のように自動で上に上がれる装置はない。何度でも立ち上がり、何度でも登る。吹雪さんからの的確な指導が追い風となった。
「足元を見るんじゃなくて、目線を遠くするんだ」
「はい！」
車を運転する時のような感覚か。視野を広げることが大事。これはドリブルする時にも言えそう。
輝くんはスポーツ初心者で最初は失敗ばかりしていたのに、あっという間にコツを掴んでいる。成長速度が段違いで、正直焦る。錦くんは並外れた才能で、何度か成功している。剣城は才能の塊で、このチームの中で一番上手い。剣城は例え失敗したとしても切り替えが早いので、他のメンバーは剣城を模範として見倣い、彼の背中を追い続けた。それぞれが無我夢中で努力している。みんなに負けていられない。
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年1月19日 13時
