桜前線 2【GO】 (ページ21)

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68　稲妻町の遊園地 [2] ページ21

コーヒーカップやメリーゴーランドに乗ったりして遊園地を満喫した。夕方になり閉園時間が近づくと、観覧車がライトアップされた。その幻想的な雰囲気に魅せられて、最後に乗ることになった。ゴンドラの中はとても静かだ。神童くんはぼうっと外を見ている。その横顔が綺麗で、そのまま時が止まってしまえばいいのにと思う。ゆっくりと高度が上がっていく。神童くんはなにかを見つけたように呟いた。

「雷門中だ」
「えっ、どこどこ？」
「あっちです」

上から見た雷門中は、存在感のある建物だった。しばらく無言で景色を眺めていた。

「Aさんと出会ったのはつい最近のことなのに、もう随分前から一緒にいるような気がします」
「うん。私もそう思う」

神童くんが振り向く。その目は真っ直ぐ私を見ていた。

「ほんと不思議な出会いだよね。多分、私たちは違う世界の住人同士なのに」
「そうですね」
「こうして神童くんと出会えてよかった。サッカーが楽しいって思えたのは、神童くんのおかげだよ」
「俺もAさんと出会えたから、サッカーに向き合えました」

神童くんは鞄から何かを取り出し、差し出した。

「これ、よかったら」

手の上には、音符のキーホルダーが一つ。光が反射して、一瞬キラリと輝いた。

「さっきお店で買いました。俺の分もあります」
「もしかして、お揃い？」
「はい。Aさんがもし嫌じゃなければ、受け取ってくれたら嬉しいな」
「ありがとう！すっごく綺麗！」

神童くんが携帯につけていたので、自分も同様にした。

「ねえねえ、神童くん。私たち同い年のようなものだし、タメで呼んでもらえない？」
「えっ。でも...」
「そうしてくれた方が気楽かも。ほら、試合中に指示出す時に呼びやすくもなるでしょ」
「わかりました。じゃなくて...わかった。Aさんがそう言うなら」
「Aでいいよ」
「＿A」

突如として沈黙が訪れる。静かな空間の中で、二人見つめ合っていた。

「...なんか、照れくさいね」
「俺のことも気軽に呼んでください」
「たっくん！...はどう？」
「たっくんか。じゃあそれで」

お互いの呼び名が改まったところで、観覧車は終わりを迎えた。楽しい1日が終わり、次の試合に向けて気持ちを新たにした。