桜前線 2【GO】 (ページ3)

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50　幻のカレーパンは誰の手にページ3

昼休み。クラスの友達と食堂に行くと、何やらすごい人混みだった。友達に聞くと、あれはカレーパンの争奪戦だという。長蛇の列を見ると並びたくなるという、所謂"バンドワゴン効果"に乗るタイプの人間なので、争奪戦に参加するため人混みの中に入った。

最後の数個のうち一つに手を伸ばす。その時、別の手が触れた。真横からだ。振り向くと、棘付きの赤いブレスレットと紫色の服。見上げると、そこには剣城くんがいた。

「あ...」
「...」

真横に立ち、互いに固まる。ていうか、剣城くんって思ってたより背高いな。見上げないと顔が見れない。ここは先輩として心の広さを見せなければ。人気商品を失うのは惜しいが、譲ることにした。

「どうぞ」

そういえば剣城くんって私のこと認識してるのかな。話したことないし、顔と名前を覚えられていない可能性が高い。私はもちろん剣城くんのこと知ってるけど。そう思っていると、剣城くんは表情を変えずに返答した。

「いえ、俺はいいです」
「でも」

その瞬間、何者かによって最後の一つに手をつけられた。あっという間にワゴンは空になる。ひしめく程いた学生たちは一気に立ち去った。ワゴンの前には私たち二人だけが残され、立ち尽くす。剣城くんは空になったワゴンをちらりと見てから、会釈だけして去っていった。

結局買えもしなかったし、譲った意味もなかった。残念すぎる結果。落ち込みながら、他の商品を買った。先ほど起こったことを連れの友達に話すと、同情された。

「"幻のカレーパン"だもん。そりゃー、戦争だよ」
「幻のカレーパンか。一回でいいから食べてみたいなあ...」

♪

通知が鳴る。スマホを開けると、イナッターからの通知だった。どれどれ、確認しよう。

食堂でカレーパンをゲットしました!これで今日も練習がんばります!

信助くんの呟きが1件。信助くん...中々やる子だな。