桜前線 2【GO】 (ページ20)

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67　稲妻町の遊園地 [1] ページ20

連日サッカー漬けの生活をしていたので、気晴らしに神童くんと休日に遊園地へ行くことになった。稲妻町に遊園地があったなんて驚いた。

「遊園地、久しぶりだなー！」
「俺もです」
「いつ頃行ったの？」
「小さい頃、父に連れられて行きました」
「お父さんと一緒に行ったんだ。そういえば、お父さんとは今、同居してないの？」
「両親ともに海外出張に行っています」

中学生の息子を置いて海外出張か。寂しくないのかな。そう思い、尋ねてみた。

「正直、寂しくなる時もあります。でも、今は側にAさんがいる」

目が合い、神童くんは柔らかく微笑んだ。

「Aさんは？」
「私？私はねー、えーっと...中学の時かな。修学旅行以来かも」

高校大学では単なる学校と家の往復だったし、就職してからは仕事ばかりで娯楽なんて考えたことなかった。歩いている途中で神童くんがお化け屋敷に興味をもったので、入ることにした。初っ端からお化け屋敷、面白い。屋敷に足を踏み入れると、途端に視界が悪くなる。どこからか聴こえてくるうめき声。小道具の作り込みがすごくて、自然とその世界に没入していく。道が狭いので、一列になって進む。

「足元気をつけてください」
「うん、ありがとう」

神童くんが先頭を切って進み、その後ろを歩く。はぐれないように途中から手を繋いだ。ぎゅっと握ると、しっかりと握りかえしてくれる。その手は小さく震えていた。表には出さないけど、神童くんも心の中では怖いのかな。少し歩いていくと、突然お化け役の人が飛び出してきて、思わず悲鳴を上げた。神童くんは声も出さずに固まっているようだった。ようやく出口に出ると、神童くんはほっと胸をなでおろした。

「結構怖かったですね」

神童くんが笑いかける。ドキドキしているのがバレないように、そうだね、と返す。次のアトラクションは、ジェットコースター。急降下の時が訪れると、今度は二人とも叫んだ。内臓が浮く感覚は独特だけどクセになる。隣から怯えたような悲鳴が上がり、さらに恐怖が増した。一回転して、終了。ようやく終わった、と振り向くと、神童くんは前髪がバサバサになった状態で茫然としていた。