65 vs 白恋 [1] ページ18
試合当日。バスの中で狩屋くんの"ランランランニング"技命名を聞いて爆笑した後、ホーリーライナーで会場まで向かった。到着後に下車すると、一気に冷気が全身を包んだ。
「さッッッッッッ」
息が超白い。今ジャージ着てるけど、絶対脱ぎたくない。会場もこの温度だったら地獄だ。目の前に広大な雪原が広がる。この春の時期に、人工的に設定された氷点下。寒い。めちゃくちゃ寒い。道に氷柱がある。寒い。みんなも寒いとしか言わない。喉から手が出る程ジャンパーが即刻欲しい。会場に入ると、グラウンドがまさかの氷。ツルツルだ。これ絶対滑るでしょ。尻餅ついたら痛そう。
「試合に出るメンバーを発表する。フォワード、剣城・佐倉・倉間」
選ばれた。私、FWに選ばれたんだ。頑張るぞ。選手が皆グラウンドへ向かう。私も皆と同じように進んだ。公式試合は初。緊張で足が震えて来た。その時、倉間くんに肩をポンとされた。
「大丈夫だ。お前ならできる」
そう励ます倉間くんは、中腰で両足をプルプルさせながら不安定に立っていた。違う意味で足が震えている様子。やはり氷のグラウンドだと、立ち続けるのも一苦労である。とうとう試合が始まる。ヤバい。緊張する。ちゃんとプレーできるかな。狩屋くんを見ると、彼も少し苦労しているようでちょっと安心した。安心すると言えば聞こえは悪いけど、正直そう思っている。同じ時期に入部した優秀な狩屋くんに置いていかれたくないという気持ちが最近芽生えている気がする、対抗心のような。
白恋中は雪国出身なので氷の上でもへっちゃらだが、雷門は皆慣れない環境に苦戦して、走るのもままならない。私はスケートの経験が少しあったので、スケートリンクを滑るように進み始めた。立つ時はV字。スケートの場合、進む時は片足ずつだけど、今はスケート靴ではなくスパイクを履いているので真っ直ぐ進んでも大丈夫そう。でも実際に進むと、思った通りに進めなかった。
試合が始まり、案の定グラウンドに苦戦する。このグラウンドは完全なスケートリンクではない。グラウンドとスケートリンクのちょうど中間。しかも、今自分が履いているのはスパイクだ。スケートのように進んでも、思うようにいかなかった。それに、寒い場所は空気が乾燥していて、息が切れる。これは厳しい戦いになりそう。
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年1月19日 13時
