58 vs 月山国光 [2] ページ11
思わず立ち上がって驚いた。これってサッカーの試合だよね。妨害しちゃダメじゃん。竜巻に吸い込まれるように巻き込まれた倉間くんは高い位置から落下する。怪我はなさそうだ。今度は3つの竜巻が出てきて、それを盾にして攻め込んできた。会場が敵に回っている。公式試合だというのに、不公平じゃないのか。再び竜巻が出て来た時、鬼道コーチは分析した。
「やはりな。敵は竜巻のパターンを知っている。どのタイミングで発生し、どんな進路をとるのか」
なるほど。ということは、月山国光の動きを見てこちらも動けば、竜巻を回避しやすいというわけだ。話を聞いているうちに天馬くんが竜巻に突っ込んでいった。天馬くんはそよ風ステップで竜巻を攻略した。天馬くんにしかできない攻略方法だ。風には風を、ということか。考えたな。しかし、月山国光の方がさらに一枚上手で、竜巻の出てくるところに天馬くんを誘導することで無力化してきた。
「相手選手の動きに注意を向けると、竜巻のパターンを読みきれない。...厳しいな」
竜巻は完全に月山国光の味方。それに対抗する武器をもたない雷門は圧倒的に不利だ。それに、ディフェンスが噛み合っていない。鬼道コーチが呆れたように呟く。
「...どうしたディフェンス」
「霧野と狩屋か」
そういえば最近霧野くんの調子がおかしい。練習でも身が入ってないようだった。なにか悩みがあるのかな。それに対して、狩屋くんの活躍が目覚ましい。柔軟で機敏。優秀な選手だ。狩屋くんもヒロトさんに教えてもらってるのかな。
「見たか、狩屋の今の動き」
「ああ。あの体勢からよくできるな。あんな方向転換」
「ボディバランスが凄いな」
一乃くんは観察眼があるので、隣で話を聞いていて参考になる。月山国光が1点選手し、ハーフタイムが訪れた。茜ちゃんと私でタオルを皆に配り、水鳥ちゃんと葵ちゃんでドリンクを配った。後半戦は霧野くんをベンチに下げて、10人で戦う方針らしい。
「霧野くん、どうしたの。調子悪い？」
「狩屋だ。連携を崩しているのはあいつだ」
とても険しい顔をして、隣のベンチに座った。
「狩屋くん？」
「俺はシードだと思ってる。そうとしか考えられないんだ」
「狩屋くんがシードか。うーん、そんな感じはしないけどな」
ヒロトさんの知り合いがシードだとは思えない。仮にシードだとしたら、元シードの剣城くんが何か言うだろう。しかし、霧野くんは完全に疑っていた。
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作者名：充滞 | 作成日時：2024年1月19日 13時
