桜前線 2【GO】 (ページ1)

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ブクブクブクブクブクブク！！！！！！！く、苦しいッッッ、ザバーーーーーーッッッッッ！！！！

「はあーっはあーっはあーっはあっはあーっ」

死ぬかと思った。目が覚めたら溺れてた。ここは、…神童邸の浴場？そうだ、この前私ここで意識失ったんだった。それで職場に戻って＿、またここに戻って来た。

「上がろ......」

全身真っ赤。ぽたぽたと雫を垂らしながらタイルの上を歩く。脱衣場への扉を開くと、その先には神童くんが立っていた。全身肌色。互いに大きな声で叫んだ。

「うわーーーーーっ!?!?!?!?」
「キャーーーーーッ!?!?!?!?」

全身を隠すため、即座に屈んだ。恐る恐る前を向くと、扉は既に閉められていた。しかし、人影は見える。

「す、すみません。まさかAさんが入ってるとは思わなくて...」
「いや、私の方こそ...」

神童邸の浴場は広いので、脱衣場まで浴場使用の音が響かないのかもしれない。広すぎるとこういう事故が起こる、と。今度はほんの少し扉が開き、そこからタオルを持った手だけが出てきた。

「隠すのに使ってください」
「あ...ありがとう」

タオルで体を隠す。

「出てもいい？」
「どうぞ」

扉を開けると、そこには腰にタオルを巻いたまま背を向け、目を両手で覆っている神童くんがいた。ポーズがなんか可愛い。

「すぐ着替えるね、ちょっと待っててね」
「はい...」

目を覆っているうちにささっと着替えてしまおう。バスタオルを高速で動かし、光の速さで服を着る。その間40秒。

「神童くん、もう大丈夫だよ」
「わかりました。それじゃ、出てもらっていいですか」
「うん。ごめんね」
「いえ。俺が確認しなかったのが悪いんです。すみません」

普段とは違う、余裕のない声。切羽詰まってそうだ。忘れ物がないかだけ確認をしてから脱衣場を出ると、執事さんが駆けつけた。

「悲鳴が聞こえましたが、どうされましたか」
「いえ。ご心配なく」

神童くんの名誉のためにも、言わぬが吉だろう。咄嗟にはぐらかした。事情を深く説明して、ここに長く留まるのも良くない。

浸かりすぎたのと、溺れたのと、先程の驚きのトリプルパンチで色々限界を迎えていた。客室に戻ると、身を任せるようにベッドに倒れる。髪が濡れているのが気にならない程に疲弊していた。何度も先ほどの光景がフラッシュバックする。これは事件だなあ。