104 稲妻総合病院にて ページ8
拓人くんは緊急手術をすることになった。両親はもうすぐ到着するらしい。海外で出張している筈なのに、もう着くなんて早いな。「手術中」の表示灯が消え、執刀医と思われる人が中から出てきた。
「手術は成功しました」
ほっと安堵した声が聞こえてきた。緊張していた全身の筋肉が緩む。一命を取りとめたみたい。よかった。
「1ヶ月は安静にする必要があります。しばらくは右足をギプスで固定することになるでしょう」
「神童くんは、試合には出られないってことですか？」
「ええ...残念ですが」
決勝戦に出られないのは残念だけど、命が助かっただけで奇跡だと思う。本当に良かった。しかし、皆は命が助かったことよりも、決勝戦に出場できないことに対して意識を向け、ショックを受けていた。静まり返る雷門中サッカー部一同。自分も含め、皆が下を向いている。その時、鬼道監督が皆に伝えた。
「大人数で長居しては他の利用者に迷惑をかける。...春奈」
「みんな、雷門中へ帰るわよ」
鬼道監督は残り、音無先生が雷門中サッカー部一同を先導して帰っていった。しかし、私はその場に残った。
「佐倉。お前は帰らないのか」
「もう少し、ここにいます」
「...そういえば、お前は神童と暮らしてるんだったな」
「はい」
沈黙が流れる。互いに立ったまま、時が過ぎていった。時計の針は進み続ける。ある時、夫婦と思われる二人がやって来た。
「鬼道監督ですか」
「はい」
「神童拓人の父です。息子が手術をしたというのは本当ですか」
「本当です。試合中に頭を強く打ち、先ほど緊急手術をしました。手術は成功しましたが、1ヶ月は安静にするようにとのことでした」
「そうでしたか...」
すると、鬼道監督は深く頭を下げた。
「この度は息子さんを預かっていながら、このような事態になってしまい申し訳ありません」
「いえ、どうか頭をあげてください。鬼道監督は何も悪くありません。迅速な判断によって、息子の命を守っていただきありがとうございました」
次に、拓人くんの両親はこちらの存在に気付いた。
「あなたは...Aちゃんかしら？」
「は、はい！」
「息子から話は聞いているわ。これから家に帰るのよね？一緒に帰りましょう」
「宜しくお願いします」
鬼道監督に一礼をしてから、両親とともに家に戻った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
充滞(プロフ) - ビジュさん» イナイレ小説の作者様にそう言っていただけて嬉しいです！永劫回帰など拝読しております。コメントありがとうございます！ (2月22日 20時) (
レス) id: a229a1ca73 (このIDを非表示/違反報告)
ビジュ(プロフ) - 丁寧な試合シーンの描写に引き込まれました…！作者さんのサッカーの豊富な知識も伝わってきてすぐに虜になりました！お身体に気を付けてご自身のペースで頑張って下さい( ꈍᴗꈍ) (2月22日 18時) (レス) @page23 id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：充滞 | 作成日時：2024年2月15日 20時
