機会 -Jiyong- ページ5
自分の意思ではないにしろ、
Aのことを忘れてしまって本当にごめん。
あの時、あの状況で、
Aを1人にしてしまい、本当にごめん。
他のことなら良かったのに…
なんて思うけど。
先生が昔言ってた言葉を思い出す。
『想いが強すぎて。深すぎて。』
「Aは…俺のこと恨んでた？1人にした俺のことを、憎んでた？」
指を変え、何度も何度も拭っても、
Aの涙は止まらない。
そのまま、泣きながらAが首を左右に振った。
「一度も？」
そうしたら今度は、首を縦に振った。
一度手を引っ込めて空を見上げた。
そして大きく息を吐いた。
そうやって何度か呼吸を整えていると、
「ステージの上だけじゃなく、他でもたくさん笑ってる？辛いこととか、しんどいこともたくさんあるだろうけど、ジヨンくんは幸せ？なら私は、それで充分。恨むとか憎むなんて…あの事も、後悔したことなんて…一度だってあるわけないじゃん。」
涙を溜め、目は真っ赤で。
だけど笑顔で。
あの時もそうだった。
「ごめん…本当にごめん…」
泣く資格なんて俺にはない。
だけど我慢しようと思っても無理だった。
ダサくて、恥ずかしくて、
Aに背を向けシャツで顔を拭った。
「ジヨンくん。だから、もう過去に囚われなくてもいいんだよ。」
後ろから聞こえた言葉。
『囚われる』
あまり普段聞かない言葉。
Aの口からその言葉が出たことに違和感を感じた。
なんでそんな言葉を使う？
………あ。
頭の中をぐるりとその言葉が周り、
思い出した。
俺が言ったんだ。
もう一度顔を拭いて大きく深呼吸し、
ゆっくりとAの方に向き直した。
「多分、今俺がたくさんのことを言っても、Aも信じられないと思う。だから機会が欲しい。」
「機会？」
「勝手だけど、話をする、説明をする機会というか、時間が欲しい。このままここで、さよならなんて…俺にはできない。」
「……」
俺自身も今ぐちゃぐちゃで、
何をどう話せばいいのかわからない。
一方的に俺が全て否定した所で、
Aがそれを信じるとは思えない。
だから時間が欲しいと言った。
そういう事自体、
すごく自分勝手なんだとはわかっていたけど。
だけど答えがないA。
下を向き、困惑した表情。
風に揺れる髪の毛。
その一本さえ愛おしいと思う。
まつ毛についた涙の一粒。
それにさえ触れたくてたまらない。
何度でも言うよ。
そう思うのはAしかいないんだよって。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 445人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
がほ(プロフ) - 癒仁さん» こんにちは^ ^コメありがとうございます！切なくて…キュンとして…少しでもそんな気持ちになって下さったなら、本当に嬉しいです！まだ稚拙な文章ですが、これからも頑張ります^ ^ありがとうございました！ (2017年6月16日 9時) (
レス) id: b9b3e3aa96 (このIDを非表示/違反報告)
癒仁(プロフ) - とっても切なくて、でもキュンとしてとっても面白かったです！！！おつかれさまでした！ (2017年6月16日 7時) (レス) id: cb8edbbef5 (このIDを非表示/違反報告)
がほ(プロフ) - ritaさん» こんばんは☆コメありがとうございます^ ^次作も頑張ります^ ^ (2017年6月15日 22時) (レス) id: b9b3e3aa96 (このIDを非表示/違反報告)
rita(プロフ) - お疲れ様でした(*´Ｕ`*) (2017年6月15日 19時) (レス) id: 126bc83529 (このIDを非表示/違反報告)
がほ(プロフ) - tomatoさん» こちらこそ、プロではないし、ただの素人の作品なのに、そんなに褒めて頂いて胸がいっぱいです。本当にありがとうございます。書き終えた安堵感はあれど、すでに妄想に飢えつつあるので…本当にすぐ書き始めると思います^ ^また読んでもらえると嬉しいです^ ^ (2017年6月15日 18時) (レス) id: b9b3e3aa96 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：がほ
| 作成日時：2017年5月12日 11時
