伍壱 看病 ページ4
「総悟さんは私の予想外過ぎます…」
握った手を強く握りしめれば、もう片方の手も取られた。見つめた瞳は私の大好きな色。
どうしようもなく好き。
その気持ちが涙になって溢れた。
両手を取られているわけで、拭うこともできない。
豚って泣くんだなァといじめられ、まじまじと顔を見られる。涙交じりに、
「手、離して下さい」
と言うと嫌だねィと即答です…
「また、逃がしちまいそうだからな」
ドSの極みの笑みで話す彼。
まぁ仕方ない……野生のサディストだから…
野生って何だろう?
生息してるものなのサディストって。
「お前が泣かなくなるまで、嫌って言っても離してやらねェから」
「私も総悟さんが笑うまで、嫌って言われても離れてあげないですから」
「上等でさァ」
「…はい。……総悟さん!?大丈夫ですか、しっかり!!」
私の肩に力がかかる。
息は荒くとても苦しそうで。とりあえず座ってもらおうと腕を回して試みたが、想像以上に大きい身体でコントロールしにくい。
「…悪ィ…部屋まで頼む」
「頑張って!総悟さん!!」
どうしよう……この時間じゃ、門番さんくらいしか居ない…私、車運転できないし…
そうだ!庭にリアカーがあったよね!!
「……寝てくださいね。私は電話してきますから
だから…手離してもらわないと…」
さっきから繋がれたままの手。
…寂しいのかな?
ここは賑やかだけど病院はそうじゃなかったから。
「離さねェ。そう言ったはずだ。
お前はいつもいつも離れていこうとする。今だってそうなんだろィ?
お前みたいな雌豚負担にすらならねェよ」
やっぱり見透かされてしまう。
他人のことなんて考えてなさそうな彼。だけどそんなわけない。
いつも誰かに期待されて、いつも誰かに恨まれている彼だからこそ誰よりも考えなくてはならない。
誰かを守る為に誰かに恨まれて、本当の姿なんて見せるわけにはいかない。
そんな心にも身体にも傷を負った彼。
「いや…側にいてほしい」
え…
すぐに背中を向けられてしまって表情は見えない。でも…良かったのかもしれない。
嬉しくて、嬉しすぎて溢れてしまうから。
繋いだ彼の右手を両手で握り、微笑む。
するとこっちを向いて彼は笑った。
「Aは笑ってた方がまだ…ま…し…」
そのまま瞼を閉じた。
ましって何ですか!!RADYに対して!
するとタイミング悪く携帯が鳴った。
やめろよ!総悟様が起きてしまわれるだろ?
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作者名:千の歌を歌う人 | 作成日時:2019年9月8日 1時