肆玖 葛藤 ページ2
「そうだ…ありがとうございますね。タオルとこれ。…もしかして私のじゃなかったですか!?」
なんでこいつが…
これ、と見せてきたのはあげるはずだったネックレス。誰から渡されたと聞けば、旦那から落し物と渡されたらしい。
「そうだよお前にだよ。悪ィな血、付いてただろ?」
大袈裟なくらいに頭を振り、逆に気を使わせたみたいでと言う。
素直じゃないよなほんと。プレゼントだって言いたいのに上手く伝えられねェ。
まだ書きかけだったメッセージカードには誕生日おめでとう。そう書くのが妥当なところだったのだろう。それももう無理な話だが。
「本当にもらってもいいんですか。罠じゃないですよね?まさか、爆発したり…」
「んなわけあるかよ。お前弱そうだからそんなことしねェよ。それはただの“餞別”だ」
意気地ねェよな。
よりによって勢いで出た言葉が餞別だなんて。
しかも、顔を合わせることも出来ず明後日の方向を向いて。
会話の途切れた部屋。
何かつっこまれるかと思ったがそれは違った。
あいつの方を見ると、目が合った。そして驚いた。
泣きながら笑うから。本当に嬉しそうに、幸せそうに。……悲しそうに。
「…ありがとう。すごく嬉しい」
「君は、春村Aさんかな?」
「…えっ?はいそうです」
「突然すみません。私は、こういう者です」
帰り道いきなり声をかけられた。
身長の高い、まだ若い男性。
名刺を差し出され一礼しながら受け取る。
…これは…
話しかけてきた理由なんて、それ一枚で何となく分かった。心のない乾いた笑みを向けられる。
「立ち話じゃ何だから、ついて来てもらえますか」
「話は理解して頂けましたか?」
まるで、初めから想定していたかのように貸し切り状態のカフェ。そこで持ち寄られた話。
「はい。つまり、私をお金で釣りたいと」
「あはは。そう捉えられてしまいましたか。あなたには身寄りがないと聞きました。いい話でしょ?」
震える手を握りしめて私はまた、嘘を並べる。
表情を保つので精一杯。
分からないの。
神威さんもだけど何故私の力が必要なの?
それとも…必要なのはこの世界と関係のない存在だけで、この世界での
「それと君と沖田くんはどんな関係なんですか?」
「……え…別に何も…」
「君達は、近づけば近づく程に壊れていくだろう」
本来出会うはずなかった人達の運命を狂わせているのは………私。
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作者名:千の歌を歌う人 | 作成日時:2019年9月8日 1時