正解 ページ5
日の出の時間が近づいている。
千花がこのまま死んでしまうとしても、鬼となるとしても、ここに留まりづつけるのは得策ではない。
童磨さんも同じことを思ったようで、静かに立ち上がった。
琵琶の君、と口の中で呟くのが、かすかに聞こえる。
聞き慣れた琵琶の音がして、私たちは転送された。
ここはどこだろう?
初めて来るこの部屋の中で、私達がいる場所の周囲だけに花が咲き乱れている。
童磨さんを見ると、慣れた様子で側にあった妙な形の帽子を被るところだった。
被り切るのを待って、私はそっと尋ねる。
A『あの、ここは』
私の様子を見て、童磨さんが微笑んだ。
童磨「単純に言えば俺の家、かな。前に宗教の教祖をしてるって言ったことがあったよね?この部屋で、俺は信者たちの話を聞いて救ってやっているんだ」
A『そうだったんですね』
童磨「信者は女性が多いから。俺も時々気の毒な女性を保護することがあるし、君の妹を保護しても不思議はないでしょ」
A『なるほど・・・』
初対面のとき、自分の考えていることを当てられたことを思い出した。
その時も思ったが、悪い言い方をするとのらりくらりとしているように見える彼は本当は驚くほど鋭い人だ。
だからこそ、今回も短時間のうちに千花を鬼にすることを、更に意識のない彼女を自分の屋敷に置くことを決めたのだろう。
A『なんというか、流石ですね』
童磨「どうしたの?」
A『・・・いえ』
うまく伝えられず、私は愛想笑いで誤魔化した。
そんな私の心境を知ってか知らずか、童磨さんはその柔和な笑みを崩さぬまま私から千花に目を落とした。
童磨「そろそろ信者たちが来るだろうから、君の妹は奥の部屋に寝かせておこう。君も奥にいるといいよ」
A『はい、ありがとうございます』
奥の部屋の布団に寝かされた千花の寝顔を見ながら、私は思案していた。
千花は、自分が鬼になったことをどう思うだろうか。
鬼になった私のことを、千花は受け入れてくれた。人間のときと同じように接してくれた。
でも、それとこれとは全く別の話である。
千花の同意なく鬼にしてしまった。その事実は、私の心を苦しめた。
もし千花が鬼になどなりたくなかったと言えば、私はどうするだろう。
千花を陽光に当てて殺すしかないのか?
しかし、それはおかしいと思ってしまう。事実そうだろう。
何が正解だったのか、わからなかった。
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緋月 - たまきさん» うまかった!(^^) (2023年2月21日 13時) (レス) id: eec4e6d19c (このIDを非表示/違反報告)
たまき(プロフ) - 緋月さん» あねwwならよかった (2023年2月21日 12時) (レス) id: 10bfc6b38c (このIDを非表示/違反報告)
緋月 - たまきさん» まぁ、2つ食べれたからよかったんだけどねw (2023年2月21日 8時) (レス) id: eec4e6d19c (このIDを非表示/違反報告)
たまき(プロフ) - 緋月さん» 忘れるな!?当日に忘れるな!!w (2023年2月21日 7時) (レス) id: 10bfc6b38c (このIDを非表示/違反報告)
緋月 - たまきさん» ありがとう!🐜ケーキは今朝食べた。昨日は忘れてたらしい (2023年2月20日 15時) (レス) id: eec4e6d19c (このIDを非表示/違反報告)
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