欠けた月 ページ15
〚No Side〛
上弦の鬼は、ここ百十三年もの間入れ替わることも欠けることもなかった。
鬼狩りの柱、つまり鬼狩りの中でも最も強いとされる者たちを何人も葬り、その強さは底なしと言っても過言ではなかったはず。
人に対する憎しみや生まれついて持ち合わせていた狂気は、それを持つ鬼を強くする。
上弦はそうやって強さを蓄え、独自の技を生み出し、人を大勢殺してきたのだ。
喰えば喰うほど肉体は強靭になり、戦えば戦うほど経験や技術は有利になる。
なんと素晴らしい好循環だろう。
この好循環は、喰った人数や戦った回数を上回る実力のある者にしか破れなかった。
しかし、それを破った人間が現れた。
この事実は、今後のさらなる悲劇の予兆に過ぎないのだということを、彼ら鬼達はまだ知らない。
〚ASide〛
あの日、堕姫さんはいつもの顔で笑っていた。
鬼になったのは子供の頃だから、見た目にそぐわず少し子供っぽいところもあったけれど、そういうところが接しやすくて大好きだった。
私は、あんな笑顔で笑う”大人”を見たことがなかった。
だからこそ、堕姫さんの笑顔が、そして堕姫さんが好きだったんだ。
そして、天真爛漫な堕姫さんを心から想っていた妓夫太郎さんのことも好きだった。
普段は堕姫さんの中にいるからあまり話せていなかったけど、次に堕姫さんと会ったときには、同じ妹を持つ身として色々話したかった。
黒死牟「上弦の陸が・・・殺された・・・」
そう言われたときは、嘘だと思った。
私は見たんだ。堕姫さんが戦っているところを、一度だけだけど見たんだ。
あんなに強い堕姫さんが負けるわけない。
妓夫太郎さんだってついてる。二人同時に頸を切らなきゃ二人は死なない。
だから、嘘だ。
でも、憔悴した黒死牟さんの顔は、嘘を言っている風ではなかった。
そもそも、彼は嘘を言うような性格ではない。
千花「嘘、ですよね」
何も言えない私の隣で千花が言う。
千花「だって、前に会ったんですよ。柱をたくさん喰ったんだから大丈夫だって、言ってたんです。それなのに・・・」
黒死牟さんが、ゆるゆると首を振った。
A『また、来るねって』
私も千花に続いてなんとか紡ぎ出す。
私の声は、情けないほど震え、かすれていた。
A『また来るねって言ってたのに・・・』
その”また”はもう、訪れない。
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緋月 - たまきさん» うまかった!(^^) (2023年2月21日 13時) (レス) id: eec4e6d19c (このIDを非表示/違反報告)
たまき(プロフ) - 緋月さん» あねwwならよかった (2023年2月21日 12時) (レス) id: 10bfc6b38c (このIDを非表示/違反報告)
緋月 - たまきさん» まぁ、2つ食べれたからよかったんだけどねw (2023年2月21日 8時) (レス) id: eec4e6d19c (このIDを非表示/違反報告)
たまき(プロフ) - 緋月さん» 忘れるな!?当日に忘れるな!!w (2023年2月21日 7時) (レス) id: 10bfc6b38c (このIDを非表示/違反報告)
緋月 - たまきさん» ありがとう!🐜ケーキは今朝食べた。昨日は忘れてたらしい (2023年2月20日 15時) (レス) id: eec4e6d19c (このIDを非表示/違反報告)
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