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いつの間にか話が弾んでいる真司と叔母サンに安心して、私は接客に戻る。先程零してしまっていたお客に紅茶を運ぶと、ドアが開いた。
『いらっしゃいませ』
入ってきたのはスーツ姿の男性。
…それも、めちゃくちゃ背が高い。
今の私はヒールの甲斐もあって、身長は真司と同じ174センチだ。十分高い身長だと思う。
だが、目の前の彼はそんな私が小さく見えるくらい背が高かった。確実に蓮(181)は超えている。…なんなら190近いんじゃないか？
いや、落ち着け。背が高い人だって中にはいるさ、そんなに珍しいことじゃない。
相手はお客様だ、接客に集中しなければ。
『おひとりですか？カウンター席でよろしいで＿＿』
「あっ！アイツ！」
と、意識を戻そうとした途端、声。それは真司から発せられたもの。
驚いて振り向けば、彼は席を立ってこちらに向かってきていた。私の事を無視して背の高いその人へ詰め寄る。
「オイッ！」
「お前…！」
どうやら顔見知りらしい。…が、少し嫌な予感がする。
そして、それは見事的中した。
「弁償しろ俺のゴーグルッ！」
なんと、真司がその人に掴みかかったのだ。そのまま揺さぶって、弁償しろ弁償しろと繰り返す。
『ちょ、真司…！』
「マァマァ、元気も良くって…」
『いやそういうことじゃ…！』
止めに入ろうとすれば、叔母サンに連れ戻される。彼女曰く、男の子なんだからあれくらい元気がなくっちゃ、らしい。
いや、元気とかそういうことじゃないだろアレは。何も知らない人が見たら10:0で真司が悪いぞ、いきなり掴みかかってんだから。
現に周りには客が沢山いて、その視線の殆どは彼らに向けられている。
「あほたれ！何勘違いしてんだッこの…！」
「アッ！待てよ！」
それからしばらくして、背の高い男性は真司を振り払って花鶏を出ていった。追って、真司も出て行く。
嵐のように過ぎ去ったソレを見て、ため息をつく。笑顔なのは叔母サンだけだ。
一度いい人間と判断したら、それを突き通してしまうらしい。
追いかけた方がいいのかとも考えたけれど、仕事はまだまだ残っている。
とりあえず…真司が面倒事を持ってこないよう祈っておこう。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年9月24日 18時
