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「蓮！Aちゃん！」
『真司…』
「城戸…！」
「何してんだよ。何で、刑事さんが…？」
真司はバイクを停め、こちらに歩み寄って来る。そして須藤サンの車の中に優衣を見つけ、説明を求めるように振り返った。
「二人相手ではいくらなんでも不利すぎる。止めましょう」
言って、須藤サンがデッキをしまった。
「Aさん…」
「オイ、」
須藤サンがこちらに歩み寄って、蓮が私を隠すように進み出た。ソレを見て、須藤サンは恨めしそうに舌打ちをする。
蓮が広げた右腕の隙間から、須藤サンの顔が見える。目が合って、彼はいつもの優しい笑顔で言った。
「Aさん。今まで貴方にしてきた事や、貴方への感情は全て本物です。ライダーバトルなんて関係なく、一個人として」
『……』
「それだけ、」
覚えておいてください。
『すど、』
「A」
『……』
須藤さんは、私たちの横をすり抜けて帰って行った。複雑な心境でソレを見詰めていると、真司がこちらへやってくる。
「どういうことだよ、」
「ヤツがシザースだったんだ。加賀はヤツに殺されてた」
「真逆…」
真司が目を見開いて、それから俯く。蓮は胸ぐらを掴んで問いただした。
「ヤツは俺や優衣の事を知っていた…！お前か…」
「おれ…」
「言ったはずだ！迂闊な事をするなと…。お前のせいで俺も優衣も狙われたんだぞ」
真司は車の中の優衣を見詰めた。
私はドアを開けて、優衣の様子を確認する。怪我は無し。呼吸もある。…眠っているだけだ。…良かった。
＿＿あ、須藤サンの車のドア…自分で開けたの、初めてだな。
「これで分かっただろう。最後に生き残れるライダーは一人。戦わなければ生き残れない…！」
"戦わなければ生き残れない"
蓮の言ったその言葉が、なんだか、凄く重たい気がして。ソレを振り払うように、優衣に手を伸ばす。
背中と膝の裏に腕を滑り込ませて、優衣の体を持ち上げた。
「それでも戦いたくなければ、死ぬのはお前の勝手だ。だが俺や優衣…Aを、巻き込むな」
「……」
「帰るぞ、A。代わらなくて平気か？」
『ぁ、うん…大丈夫…』
蓮に言われるままその場を後にする。感情がまとまらない頭では、私は蓮の指示に従うことしか出来なかった。
眠ったままの優衣をバイクの後ろに乗せて、落ちないように固定する。
出来る限りスピードを出さないようにして、花鶏へバイクを走らせた。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年9月24日 18時
