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現在時刻夜10時。
もう深夜に分類されるこの時間帯に、私は一人、駅までの道を歩いていた。
何故こんな時間になったかと言えば、単に仕事が長引いただけのことである。よくある事だし、手当も出るので不満はない。
いつもと違うのは、今、私は一人で夜道を歩いているということだ。私が、バイクも車も使わず取材に行くのは珍しい。
今日は色々と重なってしまったのだ。
偶然バイクを点検していて車しか使えない日に、偶然取材先に駐車スペースがないからバイクか徒歩で来てくれと頼まれ、偶然相手方にトラブルがあり取材が長引いた。
故に今、治安がいいとは言えないこの道を、一人で歩いている。
「オイ、そこの」
『……？』
「そこの白い女、そうだよお前だよ」
呼び止められて振り向くと、酔っているのか真っ赤な顔をした男が二人。手にビール缶を持っていたから、その疑いは確信に変わった。
私が後ずさると、男達は距離を詰めてくる。
夜遅くに危ないだのという小言が始まり、終わったかと思えば次は胸がどうだとか尻がどうだとかのセクハラが垂れ流される。
そして男達の発言は、私の格好に関することに移った。
「そんな舐めた格好しやがって、女のくせに、」
「生意気だよなぁ」
格好にイチャモン付けられるのは嫌いだ。この格好は就活時から変えたことがないこだわりのモノだし、アイデンティティ。
そして、女のくせに、という言葉も大っ嫌いだった。そうやって女だからと舐められないためにこんな格好をしているのだから。
「せっかくいい顔してんのに踵高い靴履くんじゃねえよ。男を立てる気ねぇのかよ」
『あるわけねぇだろ。男のために着飾ってんじゃねぇんだよ』
「テメェ…！」
ムカついたので、少し噛み付いてみた。男達は案の定逆上して、拳を握りこんで歩いてくる。
正直なところ、酔っ払い相手に負ける気がしない。舐められるのが嫌だったので、昔空手やらの道場に通っていたこともある。
流石にハイヒールだと危ない。
そう思って、踵部分に指を差し入れた、時。
「何をしているんです」
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年9月24日 18時
