" The Greatest " second

ろくじゅーよん ページ15

森くんの怪我を知ってから早1週間が経っていた


未だに森くんからも連絡はなくて、よっぽど落ち込んでいるのかな……


そりゃあそうだよね、私だって全然何も手がつかない


大丈夫………？なんて連絡軽率にできなくて、


だって、大丈夫なわけないんだもん



突然鳴り響いた着信音


紛れもない森くんからで、でるのを躊躇してしまう


でも、連絡を入れてくれたんだ、でないと…





「はい、」



《あお》



前怪我した時よりもずっと声が沈んでいて

森くんじゃないみたいだった



「うん……？」



《開幕、でられんくなった》


気にしないで、とか、やっぱり言えなくて


どんな言葉も森くんを傷つけてしまう気がして



《あお気遣ってくれてんやろ》



「………そんな、わたしなんて」



《ま、すぐ治してまたホームラン打つから観に来て》



「…うん、無理しないでね」



《ん、じゃ》



強がりとも思えない



私には決して弱さを見せない森くん

こういう時くらい、見せてくれてもいいのに…




でも、私だって私だ


無理しないでね、ってもっと励ますようなこと言えないのか、私



森くんが電話してきてくれたのに、





こういう時にどう声をかけたらいいのか単純にわからない



ごめんね、森くん





こんな彼女で、もっと、励ませたり、一緒に悔しがったり、泣いたり、できないのかな



私のこと強いって言ってくれたけど、私なんて弱い人間だ





どんなことを言っても森くんを傷つけてしまうと考えてしまう





森くん、頑張れ…………やっぱりこんな言葉しか私には浮かばない




森くんのユニフォームを眺めながらまた泣いた






私の情報源は森くん本人からではなくて、ネットニュース


今は生活もままならない状況で、ギプスをつけていると

こんな時こそ傍にいて支えてあげるべきなのはわかっている

普通そうするのだろう




私は、あれから連絡も取っていなければ変わらずバイトと教習所の日々を過ごしていた




もうすぐ授業だって始まる




そんな中、私はまた別の悩みを抱えていた

ろくじゅーご→←ろくじゅーさん

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す