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呪霊を全て祓い終えたことで帳は上がり、大好きな晴れ空が、Aたちを迎える。
怪我の応急処置をし、棘に手を引かれて外に出たAは泣き腫らした顔をしていて、ぐしぐしと服の袖で涙を拭った。
「でも、なんで来てくれたん?」
ふと考えてみれば、それぞれの寮で出てきた呪霊を祓うという任務だったのを思い出す。
それなのにどうして助けに来たのだろうと不思議に思い、真希に聞いてみる。もしやハナから「あいつじゃ無理だ」と諦められていたのだろうか。それなら割と悲しいのだが、ちゃんとした理由があるようだ。
「私らが行った寮には呪霊が一体もいなくてな、何かおかしいと思ったんだよ」
「え、え、それって…………」
「バラけてるはずの呪霊が1箇所に集まってたって訳」
その“1箇所”がAの担当したC棟だった……ということだ。異変に気づいた真希がパンダと棘に連絡をし、2人の寮でも呪霊が出ないことを確認した結果、皆でC棟に行こうという事になったらしい。
「た、助け呼んでよかったん……?」
「うん。呼んでよかったとかじゃなく、寧ろ呼ばなきゃいけねえ状態だったな」
「ええっ?!1人で頑張らんでよかったん?!頑張ったのに!もぉなんで言ってくれへんかったんよ!」
「電話出なかったじゃねえかよお前!」
その言葉に慌ててスマホの着信履歴を見てみると、軽く数十件は不在着信が入っていた。「あ……」と全てを察したAは、次の瞬間、地面に勢いよく頭をつけた。
「ゴメーワクオカケシテスイマセンデシターッ!!」
「うるせえ頭上げろ傷開くぞ」
「ごめんなさい…………」
せっかく誠心誠意を込めて謝罪しているというのに、相変わらず真希は口が悪い。それでも真希は、Aが怪我を厭わず1人で呪霊を祓おうとした成長を密かに嬉しく思っていた。
「でもまぁ……正直、死んだと思ってた。あんだけの量を前にしてよく逃げなかったな、偉いぞ」
「え」
そう言った真希は、いつもの無表情のままAの頭を撫でた。馬鹿にするようにぐしゃぐしゃと撫でられることは普段からよくあるが、今の真希の手は優しかった。Aは目をぱちくりさせ、そしてその目を輝かせる。
「見たかよ棘、真希がAを褒めたぞ」
「しゃけしゃけ!」
「うるせえ!褒めてねえよ!」
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年3月4日 15時