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────────数日後
「…………雲、むっつ」
徐に空を見上げたAがそう呟く。
どうやら青い空に浮かんだ雲の数を数えていたようだ。空は透き通るような晴天で、雲も数えられるほどしかない。しかしAの心は、空のように晴れてはいなかった。
「皆さん、準備は出来ていますか」
「おう、いつでもいけるぜ」
4人が車から下りると伊地知が解説を始める。
今日は珍しく、2年生みんなで一緒の任務なのだ。
伊地知がちらりと視線を逸らした先には、工事現場の傍に建つ、団地のような建物があった。
「ここは?」
「今年打ち壊されることになった病院の寮です」
「それであすこで工事してんのな」
パンダが示す先にある工事現場には重機の音が響いていて、伊地知曰く、そこには病院があったらしい。
そして横にある建物は、病院の職員や見習いの学生が住む社員寮で、その寮内で大量の呪霊が発生したのだという。
病院や学校といった人が集まる場所は呪いが発生しやすい。この寮の呪霊を野放しにしておけば、工事現場の人達に被害が及ぶ可能性もある。なので速急に祓うように、と伊地知は続けた。
「左からにA、B、C、D棟。ここに複数の呪霊がいるようで、皆さんにはその呪霊を祓ってもらいます」
「なるほどな」
「では帳を降ろします。どうかご無事で」
伊地知が呪文を唱えると、青い空があっという間に夜に変わる。帳は周りから内側を隠すための結界。
青々と澄み渡る空も、そこに浮かぶ雲も全て暗闇に変わってしまって、Aの心の中は更に暗く落ち込んだ。
「呪霊、やっぱバラけてるかな?」
「そう考えるのが妥当だな」
「しゃけ」
「棟は4つ……ひとり1棟ずつ行くか」
「え」
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年3月4日 15時