13. まいご ページ13
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いつになく機嫌の悪いゾム君は、
シッマの手を強く握って先を歩いていた。
もう片方の手の先には戦隊ヒーローの風船が握られている。
「ねーちゃん、あれもかって!!」
そして、駄々っ子になっております。
シッマよりも物欲センサーの強かったゾム君は、
目に入るもの全部に欲しい欲しい!とこちらを見てくる。
その多くが食べ物や飲み物。
「ぽっぷこーん、めちゃくちゃ列ならんでる…」
「かって!!!!」
「ハイ…」
シッマがゾム君に「ねーちゃんこまらせんな」と言っているが、
今日はとことんゾム君を甘やかしたいと思ってしまう私は、
ついそのおねだりに負けてしまう…。保護者失格である。
ポップコーン販売店の列に並ぶ私達。
「おねえさん、少しいいかい?」
「はい…?」
「道を教えてほしくてね。ここのアトラクションまでの行き方なんだけど」
「あぁ、ここはですね……」
するり、とシッマを握っていた手を離して、
地図を指差しながら、”あちらの方です”とおおよその場所を示す。
おばあさんは、「ありがとうねえ」とニコニコお礼を言われて、
つい気分が良くなる。
「お次の方どうぞ〜」
「はーい…やっと私達の番……って、シッマ!?!?ゾム君!?!?」
子どもは、目を離したすきに何処かへ行く。
私の隣にいたはずの彼らの姿がそこにはなかった。
兄の後ろ姿に似た人物の後を追っていたゾムは、
コネシマを引きずる形で大人の後を一生懸命つけていた。
「おにいちゃっ!!」
「ん…?誰、です?」
「ぴゃっ」
エーミールではない、知らない男の人だと知ったときは、
ゾムは半泣きで、コネシマも姉の姿が辺りに見えなくなって不安を覚える。
「…どうしよ、子供が多分迷子になっているんだけど」
「うそ。ってかわいい〜!!迷子センターってどっちだったっけ」
「あっちじゃない?」
男女数名の集団に囲まれて、尚更固まってしまった2人。
ああ、来なければよかった。
一緒に来てくれない兄なんて大っ嫌いだ。
俺よりも学校を優先する兄が嫌いだ。学校も嫌いだ。
シッマの姉ちゃんは、きっと約束なんて破らないのに。
きらい、きらい!!
「すみませんっ!その子、弟で…あ、の、」
遠くの方から、走ってくるのは自身の兄の姿。
ゾムは、一層泣きながら声を出して、
必死に兄のもとへ歩く。
「にいぢゃああああ!!!」
そして抱き着くのだ。
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のんたん(プロフ) - 主様の作品大好きです!すごい引き込まれるし面白くて大満足です!少し垣間見える闇がたまりません。のんびり待つので更新は主様のペースでお願いします!定期的に見に来て余韻に慕ってます!! (10月15日 11時) (レス) @page38 id: d906a8bcb0 (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ168号 - え…これさ、夢主ちゃんの親、疑っていいやつ…? (10月5日 18時) (レス) @page35 id: bae95beb1a (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 見てる途中に見れなくなってしまいました。パスワードの解除待ってます (8月22日 23時) (レス) @page8 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リトマス紙 - 主様のこちらの作品最高すぎます…!!丁度今一気見させていただいたところなんですがなんとも言えない余韻に浸ってます…!!笑笑のんびり待つので主様もゆっくりご自分のペースで更新、頑張ってください!!好きです!!() (7月26日 5時) (レス) id: 597af49ddb (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ168号 - グッフッ(照れるemがすっげぇかわちぃ)(*´’Д’) : ;* : ;カハッ (7月2日 16時) (レス) @page14 id: bae95beb1a (このIDを非表示/違反報告)
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