魔法少女に憑依してしまった【名探偵コナン】

1話・憑依した日 ページ2

グツグツと煮えたぎる大鍋を混ぜるその様子はまるで魔女のよう・・・あれ？私なにやってんの？

無い記憶を探るも当てもない。

たしか先程は、契約課に持っていく決裁を片手にエレベーターに乗っていたはず……あれ決裁どこ行った？

鍋か？鍋の中なのか！？
夜なべして作った資料だったのにぃいいいい！
A発狂しちゃう。もう叫んじゃうわよ？
ｰｰはっ！後輩の井上さんが恋してた契約課の柳田さんは優しいと評判だし納期待ってもらえるかな？……って

んん？
目に広がるはネイルサロンに行けずに荒れ果てた指先ではなく白魚のようなお手て。

はて？私はいつぞネイルサロンに？

ラインストーンなんかはついてないが綺麗にケアしてある。しかも心なしか小さく細っこい。

「お嬢……様？」

「あん？誰だ……びぇええええええ！？」

顔を上げるとヒキガエルと融合された気味の悪い翁がいて、私は慄き叫んだ。

※

端折るとこういう事だ。

彼(ヒキガエル男)は、主人であった小泉紅子の執事を担っていたらしい。私が話を聞いた限りでは、人としての扱いだったのか曖昧な所だ。

紅子は魔女で何でもできるが(私も最初は信じられなかったが箒に跨ったら浮いたので信じた)、涙を零したら魔法の力を失うという。

しかし、紅子は泣いてしまった。
玉ねぎの刺激によるものか?と最初は巫山戯て言ってしまったが内容は泣いて当たり前だろうというものだった。

昨日は紅子の誕生日だった。
海外に住む両親もその日だけは毎年日本にやってきて紅子の生誕祭を祝っていたのだ。

しかしいくら待っても彼等は帰ってこなかった。夕方になり夜になっても。

暖かった料理は冷め、ケーキの生クリームも温く美しく飾られていた【紅子お嬢様ご生誕】の装飾も崩れ落ちた。

それを目にし、プツンｰｰと何かが切れたかのように紅子は水晶を取り出して両親の居場所を探した。

事故か？それとも遭難か？誘拐なども考え、世界中から探した。そして分かった。

「何処にも居ない……?」

あり得ない！どうして。どうして置いて行ってしまったのか。

両親に見せて喜ばせるつもりだったタペストリーも、飾り立てた部屋の装飾も全て魔術で壊してしまった。

紅子はひとしきり部屋を荒らすと、「そうか……そうよね。私も行けばいいのよ。」そう言って鍵の掛かった引出の中から薬草を掴み、大鍋の中に放り込むと何かを呟いて…………………。

その後には私がいたんだと彼(ヒキガエルな執事さん)は教えてくれた。

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