240メートルの誤算3【佐野玲於】

龍友くん ページ46

.



そのあとメンバー会議があって
ツアーのことなんか打ち合わせしたりして
仕事あるメンバーがいたから、2時間後に解散になった。

俺はこのあと単独で撮影あって
でもスタジオ近くだし、時間までジムで過ごすことに。

準備してひとりで向かう。
音楽聴きながらバイク漕いでた。
…この曲、Aと前一緒に聴いたな。
あいつも好きだって言ってた。
A、俺が好きなアーティストの曲、こっそり買って入れてたりして
それを俺が見つけてイジったら、もう一生聴かない！とか言って、拗ねてたっけ。

…あーもうだめだ
何しても、何しても、Aと繋げてしまう。
今日会いたいのに
もう、会えないのか。

Aんちに、色々置いてきちゃったな。
服も下着も歯ブラシも。
トレーニングのグッズ、ゲーム、イヤホン、ピアス
…合鍵は、持ったままだ。

…どうする？
返しに行く？
返すときに会える。
でもその時はよくても、それでバイバイしたら、もうほんとに終わってしまう。


けど、そのときにもっかい話し合えば
より戻そって言えば

閃いた頭の隅っこに
あの大学生と一緒にいる、Aの背中が浮かんだ。

…無理だ、絶対無理。
思い出すだけで腹が立って仕方ない。
こんなんでより戻したって、また同じこと繰り返すだけ。

それにA、もうあの大学生と付き合ってるかも。
…いや、そもそもなんであの時あいつら一緒にいた？
家まで送ってもらってたわけ？
そんなバカな話がある？
A女のコだよ。どっちが言い出して、家まで送ることになったんだよ。
だいたいあいつはいつも警戒心無いしさ、俺ばっかこんなに


「玲於、」

そのとき、肩に手を置かれた。
びっくりしてイヤホン取りながら振り向くと、立ってたのは龍友くん。

「え、なに…びびった。」
「いや呼んでも無視やったで、ずーっと。」
「イヤホンしてたわごめん。」

隣のバイクに跨って、首にタオルかけてる。
なに？ってもっかい聞くと

「飲みいかへん？この前のメンバーで。」

…この前のメンバー？
って、あの可愛い女の子たち？
龍友くん目キラキラさせてるけど、イヤイヤ、さすがに無い。この状況で。

「…僕昨日破局したばっかなんすよ。」
「やからこそやん。」
「いや無理無理、てか普通にやなんだけど。合コンみたいで無理。」
「合コン？うわ意識してんの？あの子たちのこと。ダッサ〜！」
「…うぜえ。」

嫌いなんだよほんとに
あの女の子、俺とAのこと、真っ向から否定したから。


.

さくらちゃん→←泣けない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す