馬鹿な話 ページ44
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「…いま、…別れようって言ったら…」
「……別れるよ。…お前の望み通り、別れる。」
「……やだよ…」
「……今なら、まだ間に合うよ。追いかけろよ。…お前のこと、すげー好きそうだった。お似合いだって。…奥二重で、まだちょっと幼くて、優しくて？いいじゃん、お前と似てる。」
「…お前って、言わないで。」
「……もう名前呼びたくない。」
「……。」
「……行けよ。」
言いながら、Aの身体を強く押した。
よろけたAは壁に手をついて、怯えた顔で俺を見上げる。
なにやってんだ、馬鹿か俺は
頭の中ではそう思うのに。
Aの小さな身体。
…俺はこれを守るために、今までずっと
ずっと、頑張ってた。
走馬灯みたいに思い出す。
嫌なことのほうが多かったな、この3年間。
もう疲れた
本当に
「…お前が弱いから、俺が強くなんなきゃって、そればっか思って、…だからキツい仕事もいっぱいやって、身体も鍛えて、デカくなって…お前のためだったのに。」
「……。」
「…なのに、2年前、出会った時と別人になってるって。それが嫌だって、別れたいって、お前言ったよね。」
「……。」
「…それ、俺がお前のためにしたこと、全部否定したんだって気付いてる？…だったらもう無理だよ。お前のために俺、何もできない。」
俺が抱えていた全部を、Aに背負わせた。
こんなに重かったんだよ、俺はずっと。
これが俺たちの最後。
せいせいするよ、もっと前に別れときゃよかったんだ。
Aの足元に転がってる財布
拾い上げて、その小さな手に握らせた。
真ん丸な目は揺れていて、今にも泣きそうだった。
「…バイバイ。」
冬の風が吹く。
吐く息は白い。
喉が凍りそうだ。
ぼおっと空を見上げた
その瞬間、突然心臓が動き出した気がして。
…待って、待ってよ
俺今、なんて言った？
別れる？Aと？
嘘でしょ？
立ち止まり、混乱する頭を必死に落ち着かせる。
俺は一体、なにをしてんだ
別れられるわけないのに。
引き返そうと思った。
嘘だよごめんって、なんでもないフリしてまた笑えばいいって
思ったのに
どうしても足が動かない。
さっきのふたりの姿が、頭から離れなくて。
自分の姿を思い出す。
キャップにマスク
わざわざ地味な服に着替えて。
…こんな俺が、一般人の彼女を守る？
…そんな馬鹿な話があるかよ。
泣きそうだった。
俺じゃないんだ。
Aに相応しい相手は俺じゃない。
そんなの、最初から分かってたはずなのに。
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mugi(プロフ) - 自分に重なることが多すぎて、感情移入どころではなかったです。素敵な作品いつも有難うございます。 (2019年11月18日 10時) (
レス) id: 4db51b5e5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆいあ - きなこさんの作品大好きです！ (2019年11月3日 18時) (レス) id: a624d1b453 (このIDを非表示/違反報告)
_myprince8(プロフ) - きなこさんの作品全て好きです。完結まで結びますように！っ (2019年11月3日 10時) (レス) id: bca9b2866b (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 私最近の玲於くんの大人っぷりに寂しいって感じてしまい玲於くん見るの少し離れてたんです。だからきなこさんの思ってること同じで嬉しくなりました。今はちょこちょこ玲於くんを応援してるつもりです。笑1日の終わりに読むきなこさんの作品いつも楽しみです！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: f500b029ae (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - きなこさんの作品の中で一番好きです。人間味があって執着する玲於ちゃんや空回りながらも同じ思いの主人公ちゃん、すれ違いがもどかしいけど読み応えがあって本当に好きです。完結まで頑張ってください！ (2019年11月2日 9時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きなこ
| 作成日時：2019年10月10日 22時
