240メートルの誤算3【佐野玲於】

元カノ ページ5

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今から5年前の話

よく行くブランドのオーナーから、俺と同い年の友人を紹介された。
神崎悠太っていうそいつは、富山からショップ出すために上京してきて、今はバイトしながら資金貯めてるって。

たまにメシ行くようになって、いい意味でノリが軽い悠太とは、すぐ友達になった。
芸能人ってどうなの？
彼女とか、やっぱ可愛いの？
悠太は、目キラキラさせながらそんなこと聞いてきて

「…お前が想像してるようなのじゃないよ。」
「なんで？モデルとかアイドルとかさ、いっぱいいんじゃん！」
「いるけどさ。俺みたいなのが付き合えると思う？結局は知り合い…てか、同業者からの紹介。」
「紹介かあ…」
「秘密守れる子って限られてるからね。…つってもまあ、暫くそういうのはいいや。仕事大事だし。」
「つまんねえ。」
「悠太は？」

聞くと、うーんって首捻って

「高3の夏に別れて以来、いない。」

へらへら笑って、そう呟く。

「ふうん。」
「受験っつーか、進路のこと話してて、まあそういう。」
「可愛かった？」
「うん。可愛かった…つーか、可愛いね。今もたまに会う。」
「あそうなの？」
「東京の大学行ってんだよね、元カノ。」
「へえ。」

元カノに会う、って
もうこの世界に入ってから、一度もないや。
もし付き合うにしても、スキなんて見せられない。
別れる時も円満に。
この世界で生き残っていくためには、誰の前でも警戒しないといけないって、何度も言われた。

「玲於が支援してくれたおかげでさ、オープン決まったから。」
「ああ、来月だっけ。」
「うん。オープン記念パーティー、絶対来てよ。」
「分かってるよ。メンさんも連れてく。」
「よっしゃ。ツテ使ってさ、芸能人いっぱい呼んでんだ。」
「お前ほんと好きだね、そういうの。笑」

目立ちたがり屋。まあ、良いところでもあるけど。

「そのパーティー、元カノも呼んだんだよね。紹介できたらするわ。」
「え？いいですいいです。」
「なんで？女子大生だよ。」
「お前の元カノと付き合うの？俺。さすがに無いでしょ。笑」


そうやって笑って、適当に流して。
後に後悔することになるとも知らずに。


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