誰だっけ? ページ37
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翌朝
アラームの音で目覚めて、Aがちゃんと隣にいることに安心する。
子どもみたいな寝顔
なんか久々に見た気がして、昨日の夜のイラついた焦りとか、忘れて
頬っぺた、撫でた。あと耳も。このちっちゃい耳。
くすぐったかったのか、少し動いた口元に笑った。
…よし、仕事頑張れる。
そっと起き上がり準備をして、家を出た。
エレベーターで降りながら、ラインする。
[ 今日20時には帰れそうだから ]
[ そこいて ]
束縛のうちに入んのか?これは。
…いやいやいいでしょこれくらい。
あいつ今日仕事ないって言ってたし。
だったらうちで待っとけばいい。今日はどうせ、そんな遅くなんないから。
帰らせると、誰かと会っちゃうんじゃないかって
なんかもう気が気じゃない。
…末期だなあ、これは。
そのあとの仕事
メンさんが体調どう?って聞いてきて
まあまあって答えると、彼女とどうなった?って。
俺がAに呼び出されたこと、ケントに聞いたらしい。
マジで口軽くて困る。
「…別れてとは言われなかったけど、浮気確定した。」
「マジ!?いやそれ…よく付き合ってられるね。」
「……ね。」
我ながらバカだと思うよ。
それはもう、じゅうぶん分かってる。
それでもやっぱり
こんな状況にも関わらず
家にAがいるって思うと、帰りの足取りが心なしか軽かった。
マンションのエントランスに入ると
ちょうどエレベーターが一階に着いて、中から誰か出てくる。女の子だ。
一瞬Aかと思ったけど、全然違くて
「こんばんは。」
声、かけられた。
バレない程度に顔を上げ、頭を下げる。
ちらって見たら、なんか見覚えのある顔。
…え、誰だっけ?
向こうはあまり気にしてない素ぶりで、俺の横を通り過ぎた。
アイドルとかかな。このマンション警備しっかりしてるから、たぶん俺以外にも芸能人住んでるし。
とはいえ詮索はご法度だから
そのままスルーしてエレベーターに乗り込む。
香水の匂いが残ってて、それもなんか
どっかで…
なんて考えながら、玄関前
鍵を回して、ドアを開けた。
インターホン鳴らさなかったのに、リビングの方から足音がして
「おかえりなさい。」
Aがちゃんと出迎えてくれる。
ずっとAの家で会ってたから、なんか自分の家で会うと、ちょっとさすがに、良いな。これは。
「ただいま。」
「早かったね。」
「うん。」
いつものふたりに戻ったみたいだった。
それにひたすら安心する。
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mugi(プロフ) - 自分に重なることが多すぎて、感情移入どころではなかったです。素敵な作品いつも有難うございます。 (2019年11月18日 10時) (レス) id: 4db51b5e5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆいあ - きなこさんの作品大好きです! (2019年11月3日 18時) (レス) id: a624d1b453 (このIDを非表示/違反報告)
_myprince8(プロフ) - きなこさんの作品全て好きです。完結まで結びますように!っ (2019年11月3日 10時) (レス) id: bca9b2866b (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 私最近の玲於くんの大人っぷりに寂しいって感じてしまい玲於くん見るの少し離れてたんです。だからきなこさんの思ってること同じで嬉しくなりました。今はちょこちょこ玲於くんを応援してるつもりです。笑1日の終わりに読むきなこさんの作品いつも楽しみです! (2019年11月3日 1時) (レス) id: f500b029ae (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - きなこさんの作品の中で一番好きです。人間味があって執着する玲於ちゃんや空回りながらも同じ思いの主人公ちゃん、すれ違いがもどかしいけど読み応えがあって本当に好きです。完結まで頑張ってください! (2019年11月2日 9時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこ | 作成日時:2019年10月10日 22時