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ティーカップ ページ22

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そのあと、不安な気持ちを搔き消すように
立ち上がって、キッチンにいるAのそばに近寄った。

料理してる顔を覗き込んで
何作んの?聞いても、返事はすげー適当。
挙げ句の果てには向こうで待ってて、って。

ひでーよなあ
いやそりゃ、別れたいって言葉を突っぱねてんのは俺だけど。

「…久しぶりに会えたってのに、かわいげがないヤツ。」

思わず呟く。

「え?」
「3年前のお前なら、たぶん飛びついてたよ。」
「…そうかな。」
「うん。だって、思い出してみ。夜中に電話してさ、会いたいよーって泣きべそかいてたんだよ、お前。」

当時はそんな電話迷惑すぎるって思ってたけど
今思い返せば、迷惑な方が、ワガママなほうが、案外嬉しいもんだな。

「…ま、3年も付き合ってたら変わるか。もう大人だしね。」

出会った時
俺もAもハタチになったばかりだった。
仕方ない仕方ない。
またそうやって自分を慰めて、たまには手伝うわ、って、食器を取り出す。

Aがいつも使ってるマグカップ。
一人暮らし始めてすぐに買ったって言ってたっけ。

「…これずっと使ってるよね。」
「…うん。かわいいから。」
「そろそろ変える?」
「いいよまだ綺麗だもん。」
「えー、そういやあれどうしたの。ヒビ入ったのにお気に入りだからって使ってたティーカップ。」
「…なにそれ、知らない。」

そう答えたA
思わず振り向く。

「…は?」
「違うコとの思い出じゃないの。」

…ああこいつ、ほんとに忘れてる。
半年記念日のとき、コンビニのケーキとココアで乾杯して
そのとき、話したのに。

このティーカップひび入ってるよ
うん、けどあんまり目立たないから…
捨てないの?
まだ使えるもん、気に入ってるし。

「…なに違うコって。俺お前以外のコと付き合ったことないんだけど。」
「…そんなバレバレな嘘つく?」
「ふは、バレバレってやめてよ。」
「もお、玲於くんあっち行ってて。お料理できない。」
「はいはい。」

ため息つきながら、ソファーに寝転ぶ。

Aは、すぐ飽きる性格なんだ
そうだよね
…わかってたけど。

.

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mugi(プロフ) - 自分に重なることが多すぎて、感情移入どころではなかったです。素敵な作品いつも有難うございます。 (2019年11月18日 10時) (レス) id: 4db51b5e5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆいあ - きなこさんの作品大好きです! (2019年11月3日 18時) (レス) id: a624d1b453 (このIDを非表示/違反報告)
_myprince8(プロフ) - きなこさんの作品全て好きです。完結まで結びますように!っ (2019年11月3日 10時) (レス) id: bca9b2866b (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 私最近の玲於くんの大人っぷりに寂しいって感じてしまい玲於くん見るの少し離れてたんです。だからきなこさんの思ってること同じで嬉しくなりました。今はちょこちょこ玲於くんを応援してるつもりです。笑1日の終わりに読むきなこさんの作品いつも楽しみです! (2019年11月3日 1時) (レス) id: f500b029ae (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - きなこさんの作品の中で一番好きです。人間味があって執着する玲於ちゃんや空回りながらも同じ思いの主人公ちゃん、すれ違いがもどかしいけど読み応えがあって本当に好きです。完結まで頑張ってください! (2019年11月2日 9時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2019年10月10日 22時

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