折り畳み傘 ページ21
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事務所に戻ってきて、取材や撮影を終え
軽くジムに行ったあと
雨が降り出しそうな雲に気付いて、もう今日は帰ることにした。
帰るって言っても、Aんちに行く日だし。
事務所出る前に、予め持ってきていた地味なジャケットを羽織る。
コレ、3000円で買ったやつ。
マスクしてキャップ被って、タクシーに乗り込む。
一度家に帰ろうかとも思ったけど、二度手間だしそのまま向かった。
見慣れたアパート。
使い慣れた合鍵。
ドア開けて入っても、Aはまだ帰ってない。
ひとりだらんてソファーに寝転んで、天井を見上げる。
…何回来たかな、ここ。
ここもだし、もう一個前の、あの狭い部屋も。
俺は何度もきてるのに、Aは全く俺の部屋に来ようとしない。
そりゃ、来てって言わないのは俺だけど
いやだって、まあ俺、好かれてないし。
こっちから誘うのはなんか気が引けてさ。
…ダメだなあ俺
何に対しても自信持ってやってるつもりだけど
Aのこととなると、どうも上手くいかない。
もしかしてほんとに別れるべきなのか？
けどそしたら俺、何を命綱に頑張ればいいか分からなくなる。
別れても、別れなくても、最悪な状況。
けど、一方的であってもそばにいたいと思うのが、男のサガというもので。
もうどうしようもないんだと思い込み、深呼吸して落ち着かせた。
Aが帰ってきたのは、それから2時間後。
おせーな電話しよっかなって思い始めたころ、玄関の鍵が開いて。足音、聞こえて。
「おかえり。」
声かけても、無視。というかうわの空。
ゲームを置いて振り向くと、目まん丸くさせたAが突っ立ってた。
「…A？」
「え、あ、ごめん。ただいま。」
「なにぼーっとしてんの。」
「いや…いるって思わなかったから。」
そう呟いたAの左手には、折り畳み傘が握られていた。
ぽた、ぽた、雨粒が床に落ちてる。
…紺色？
「…17時くらいからいた。」
「え、そんなに早く？」
「うん。暇だったから。」
「そっか。」
適当な返事のあと、持ってた折り畳み傘を玄関まで置きにいってる。
なんだあれ。
男物？会社の置き傘？…そんなのある？
うっすら胸に広がった不安。
え、吉川くんじゃないよね？
もしかしてまだ繋がってたりする？
けどあれからもう1年以上…てか、2年近く経ってるし。
でもあのときのAは、確実に吉川くんが好きだった。その末に、別れたいって言われたんだ。俺は。
頭痛がした。
頼むから、もうどこにも行くなよ。
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mugi(プロフ) - 自分に重なることが多すぎて、感情移入どころではなかったです。素敵な作品いつも有難うございます。 (2019年11月18日 10時) (
レス) id: 4db51b5e5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆいあ - きなこさんの作品大好きです！ (2019年11月3日 18時) (レス) id: a624d1b453 (このIDを非表示/違反報告)
_myprince8(プロフ) - きなこさんの作品全て好きです。完結まで結びますように！っ (2019年11月3日 10時) (レス) id: bca9b2866b (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 私最近の玲於くんの大人っぷりに寂しいって感じてしまい玲於くん見るの少し離れてたんです。だからきなこさんの思ってること同じで嬉しくなりました。今はちょこちょこ玲於くんを応援してるつもりです。笑1日の終わりに読むきなこさんの作品いつも楽しみです！ (2019年11月3日 1時) (レス) id: f500b029ae (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - きなこさんの作品の中で一番好きです。人間味があって執着する玲於ちゃんや空回りながらも同じ思いの主人公ちゃん、すれ違いがもどかしいけど読み応えがあって本当に好きです。完結まで頑張ってください！ (2019年11月2日 9時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きなこ
| 作成日時：2019年10月10日 22時
