240メートルの誤算3【佐野玲於】

ふたりで旅行 ページ19

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「いいじゃん、まあ滞在期間は短いけど…寄りたいとこはとりあえず回れるよね。」
「いいっすね。決まり？」
「俺はいいけど！」

そのままの流れで、LAにいる共通の友だちに会いに行こうって決まった。
移動時間考えたらあんまり動けないけど、せっかくの連休無駄にしたくないし。

…せっかくの、連休。
そういえばAが大学生のとき、夏休みも春休みもすげえ長いのに、どこにも出かけられなかったな。
デートなんて、いつからしてない？
たぶん、2年記念日周辺で、都内のめっちゃ高いホテル泊まったときだ。
あの時だって、別々に入って別々に出た。
俺が心配性すぎるせいだ。ああカッコわりい。

「あのさ、玲於。」
「ん？」
「そんな不満そうな顔するなら、彼女と行く？」
「…え？」
「例の、うまくいってない彼女。」
「……。」
「俺は全然良いよ。」
「…いやけど、え？メンさんは？」
「とりあえず飛行機のチケット2枚とってさ、彼女が行けないって言ったら俺が行くし。」
「……。」
「国内じゃ無理でしょ、ふたりで歩くのは。飛行機離れた席とってさ。向こう着いたらまあ、軽く変装しとけば…」

その瞬間、メンさんが神様に見えた。
気持ち悪りい髪の毛に、後光が差してた。

「…いいんすか、先輩。」
「いいよ彼女いない俺は寂しく日本で待ってるから。」

ああ天才だ。
Aと旅行？うそでしょ？
やばい素直にこれは…嬉しすぎるな。

テンション爆上がりして、その場でチケット取った。
もちろん離れた席。でも、ちょっとだけね。

けど新たな問題が発生した。
いやこれ、Aにどうやって伝える？
だってあいつ、俺のこと好きじゃない。
好きじゃないやつから一緒に旅行いこって言われたら、普通にキモくね？
俺なら嫌だ、即断る。

ああ、付き合ってすぐのあいつだったら
行く！行きたい！って、二つ返事でハグしてくれたんだろうな、なんて考えて。

別に、昔の彼女の面影探してるわけじゃないけど
あのときのAは、俺のこと大好きだったから、やっぱ可愛かったよ、めちゃくちゃ。
…いや今も可愛いけどねじゅうぶん、顔はね。けど最近丸っこくなったな。まあそれもまた…
って、今はそれどころじゃない。

ラインでシンプルに、旅行いこ、って言うか。
飛行機のチケットあるけど行く？…これはキモい。
やべえどうしよう
考えているうちに、もう1週間を切ってしまった。



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