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大丈夫 ページ29





佐野先輩の手に引かれながら
必死に走った
街灯の光でできた影が、長く伸びてる

佐野先輩の実家、近いんだよね
だったらもう、このまま走ってた方がいい?
タクシーいないし
電話で呼ぶのも時間が惜しい
わたし運動できないけど、今日はなんだか ずっと走れる気がするんだよ


玲於「A、」


走りながら、そう呟いた先輩
呼吸の間にはいって返事したら、一回だけちらって、振り返ったあと


玲於「このまま、走れる?裏道、使いたいけど、そっち行ったらタクシーいない。」


先輩の声、必死だった
そんなの もちろんいいに決まってる


A「大丈夫、走れる!」

玲於「うん。」


それから途中、何度かこけそうになりながら
でもそのたびに先輩に支えられて
ひたすら走った
夜の街を、先輩と手をつないで、ずっと走った

15分くらい経ったとき
不思議と湧いてきてた力も底をつき、信号待ちの間じゃ、回復できなくなってきてた頃
このマンションって、先輩、ついに立ち止まって


A「えっと、ここ…えっと…」

玲於「まだ45分じゃん、すげえ、すげえよ、A。」


息切れが苦しくて
なんか、喉の奥から音がする
やばい、魔法が解けたんだ
わたしの代わりに先輩が必死になってくれたから、魔法が解けた


A「せん、ぱい、…わたし、ここで…」

玲於「え?」

A「わたし、ここで待ってるから…行ってきて、はやく、」


全然疲れてなさそうな先輩
わたしの背中さすって、マンションのエントランスまで連れてってくれた


玲於「大丈夫?ごめん、椅子とかないけど、」

A「平気、平気だから、早く…」

玲於「わかった。絶対ここ動くなよ。すぐ降りてくるから。誰にもついてっちゃダメだよ。」

A「…うん。」

玲於「……うん。」


見上げた先輩は、眉間にシワ寄せて 不安そうに唇噛んでた
その姿にわたしまで苦しくなりながらも
なんとか息整えて、だいじょうぶ、って
それだけ伝えた
先輩、一回頷いて エレベーター乗り込んでく


大丈夫
絶対大丈夫
根拠なんてないけど、なんかわかるの
先輩はきっと、澄んだ目でここに戻ってくる
あの虚ろな目をした先輩は、もういない

…大丈夫、絶対大丈夫
祈るような気持ちで、その帰りを待ってた



涙→←優しい手



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maki(プロフ) - 今まで何お話、読み返したら、やっぱり佐野先輩とうまくいってほしい。。(;_;)先輩!!何してんのーー!!! (2018年8月5日 7時) (レス) id: 9583ac788f (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - ほんとに今一番大好きな小説です。全然話長くしていただいてかまいません!笑更新これからも楽しみにしていますので大変だと思いますが頑張ってくださいね! (2018年7月5日 23時) (レス) id: cb039e5484 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - きなこさんは更新率が高いことだけが取り柄だなんて、全然まったくそんなことないですよ(^^)きなこさんのお話を読むだけで元気になれます。いつもお話を読めること本当に嬉しいです。これからも応援しています。きなこさんの思ったまま書いてください! (2018年7月5日 23時) (レス) id: 49103f1761 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - さいくぅー (2018年7月5日 22時) (レス) id: 527ff0df55 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - もうきなこさんの伏線が楽しみすぎます!!楽しみにしてます!! (2018年7月5日 22時) (レス) id: c6b1080ab1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2018年6月16日 21時

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